相平衡(読み)ソウヘイコウ(英語表記)phase equilibrium

デジタル大辞泉 「相平衡」の意味・読み・例文・類語

そう‐へいこう〔サウヘイカウ〕【相平衡】

物質複数の相が安定した状態で共存していること。

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岩石学辞典 「相平衡」の解説

相平衡

相図(phase diagram)で各相の関係を調べる場合に,それぞれの相が平衡(equilibrium)の関係にあることが前提である.岩石学鉱物学に必要な相図を作成する実験でも当然平衡を得る必要があるが,反応速度が遅い場合,実験温度が低い場合などでは平衡状態に達することが非常に難しい場合がある.不純物を含む場合には相図が変化するので,実験的な結果をただちに天然の現象に当てはめることは注意が必要である.アーンストとカルバートはSiO2系の中でクリストバライト石英に転移する時間を測定および計算した結果を報告している[Ernst & Calvert : 1969].
実験結果温度計算結果
20時間500℃
330時間400℃
5 600時間300℃0.64年
200℃47年
100℃36 000年
50℃4 000 000年
29℃180 000 000年

曹長石─灰長石-H2O系の相図は多くの人々によって作られている.ヨハネスはこの系について反応時間と温度の依存性を調べた結果,温度が100℃異なると反応速度は数桁も異なることを報告している[Johannes : 1978].
1100℃1時間 以内
1000℃約1時間
900℃約200時間
800℃100 000~1 000 000時間

このように温度が下がると実験的に平衡状態を決めることは非常に困難な場合が多い[鈴木 : 1994].平衡については平衡(equilibrium)の項(1. 3. 2)参照のこと.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「相平衡」の意味・わかりやすい解説

相平衡
そうへいこう
phase equilibrium

氷が浮んだ0℃の水では固相 (氷) と液相 (水) が,少量の水を入れた密閉容器では液相 (水) と気相 (水蒸気) が共存するように,いくつかの相が共存して熱力学的な平衡状態にあることをいう。相平衡に関する最も一般的な原理が J.W.ギブズ相律で,相平衡のとき,各相の各成分の化学ポテンシャルは等しく,圧力や温度も等しい。相平衡の様子状態図で表わされるが,純粋物質の異なる相の間の相平衡と,多成分系の異なる相の間の相平衡とでは扱い方が違う。相平衡にある系の温度や圧力などの状態量を変化させると,物質はある相から他の相へ移る。これを相転移という。

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世界大百科事典(旧版)内の相平衡の言及

【相】より

…また物質系が,ただ一つの相からなる場合は均一系または単相系といい,二つ以上の相を含むときは,不均一系または多相系という。均一系が温度を下げたりすることによって二つまたはそれ以上の相に分かれて不均一になることを相分離,分離した相がそのまま安定に存在することを相平衡という。気相,固相などの呼び方のほかにも磁性体で外部磁場がないにもかかわらず磁化をもつ場合の相を強磁性相,また低温で電気抵抗が0になる相を超伝導相と呼んだりし,このほか液晶もその構成分子の配列の仕方によってコレステリック相,ネマティック相,スメクティック相などに区分される。…

※「相平衡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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