眼瞼けいれん(読み)がんけんけいれん(英語表記)Blepharospasms

  • (眼の病気)
  • Blepharospasm
  • 眼瞼けいれん Blepharospasms

家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 まぶた(眼瞼)がピクピクけいれんをおこすものです。ひどい場合は、まぶたをあけられなくなることもあります。
[治療]
 さかさまつげ、結膜嚢異物(けつまくのういぶつ)などによって角膜(かくまく)(黒目(くろめ))が刺激され反射的におこる眼瞼けいれんに対しては、原因疾患の治療が行なわれます。
 脳血管により、顔面神経圧迫されているときにおこるものもあります。程度の軽い場合は経過観察だけでよく、重症の場合に対してはボツリヌス毒素注射で顔面神経をまひさせたり、手術で神経への圧迫を取り除いたりすることもあります。
 また、特別に原因がなく、精神的な緊張やストレス、疲れなどによっておこる場合もありますが、心身を休養させて、ようすをみていると、3~6か月ぐらいで自然に治ることが多いので、心配することはありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 眼瞼けいれんは、眼瞼を閉じる筋肉(眼輪筋(がんりんきん))が過剰に緊張して開きにくい状態です。まぶただけの異常の場合と、唇にも異常を伴う場合があります。

 この病気とは別に、まぶたの一部が時々ぴくぴくと瞬間的にけいれんする状態(線維束収縮(せんいそくしゅうしゅく))がありますが、この場合、開瞼は正常にできます。

原因は何か

 眼輪筋を含めて顔の筋肉は脳から出る顔面神経によって制御されていますが、両側性の眼瞼けいれんの原因は、顔面神経に指令を与える脳の深部(大脳基底核(だいのうきていかく))の異常とされます。

 一方、片側性のものは脳を離れたあとの顔面神経が、筋肉へ至る走行経路の途中で血管や腫瘍(しゅよう)などに圧迫されて発症します。

 また逆に、神経には異常がなく、眼球に異常があってまぶたが開きにくいこともあります。線維束収縮は、ごく一部分の神経の表面の被膜が障害されて起こります。

症状の現れ方

 両眼のまぶたが過度に緊張して開きにくくなるタイプは、中年の女性に多くみられます。しばしば瞬目過剰(しゅんもくかじょう)(まばたきが異常に多い)、羞明(しゅうめい)(光を異常にまぶしがる)などを伴います。けいれんは明るい所でひどくなり、暗い所で軽減します。また、活動や緊張によってひどくなり、休息により軽減します。重症では、まったく眼があけられなくなります。

 片眼性のものは、やはり中高年に多いのですが、男女ともにみられ、同側の唇のけいれんを伴い、流涙(りゅうるい)を自覚します。

 眼球の異常では眼痛、異物感、かゆみ、羞明、流涙などがあります。

 線維束収縮は、突然まぶたの一部がぴくぴくと瞬間的にけいれんし、違和感はあるものの、痛みなどはありません。開瞼も正常です。一度起こると、時々何度か繰り返します。疲労時によく起こります。たいていは1~2週間ほどでおさまります。

検査と診断

 診察時にけいれんが生じていれば診断は容易です。診察時にけいれんが生じていなければ、誘発を試みます。たとえば、強くまぶたを閉じたり、唇を横に伸ばしたりを何度もやってみます。また、強い光を目に当てたりします。

 眼球の異常は、通常の眼科診察で診断可能です。

 線維束収縮は、その症状から判断します。ただ、まぶた以外にも全身的に同様のけいれんが多発するようなら、全身の神経の病気(多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)など)であることがあり、注意が必要です。

治療の方法

 肉体的、精神的安静をとるようにします。羞明があればサングラスをかけます。この病気に特異的な治療として、眼輪筋へのボツリヌス菌毒素の注射があります。ほかに、人工涙液の点眼や内服薬(抗コリン製剤、抗うつ薬など)を投与します。また、難治症例では眼輪筋の切除術が行われます。

 眼球の異常では、その原因疾患の治療が必要です。線維束収縮は、普通1~2週間で自然に治ります。

病気に気づいたらどうする

 まぶたのけいれんの場合、安静を心がけ、専門医を受診してください。線維束収縮は様子をみて、1~2週間で治らなければ専門医を受診してください。

森 秀夫

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

EBM 正しい治療がわかる本の解説

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 眼瞼(がんけん)けいれんは、まぶたを閉じるための眼輪筋(がんりんきん)が過度に緊張し、本人の意思に関係なくけいれんする病気です。まばたきが増える、まぶしさを感じやすくなるなどの症状で始まり、やがて、けいれんがおこるようになります。症状が重くなると、まぶたが開かなくなって目が見えない状態にまで進む場合もあります。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 この病気のはっきりとした原因はわかっていませんが、ものもらいや角膜炎(かくまくえん)、結膜炎(けつまくえん)などによる目の炎症、ゴミが目に入るといった異物の刺激、眼精(がんせい)疲労、肉体的・精神的ストレスが引きがねになるなどして、症状を悪化させることがわかっています。脳に異常があって、突然まぶたが閉じ、しばらくその状態が続くものは、本態性眼瞼けいれんと呼んでいます。

●病気の特徴
 40歳~70歳の中高年に発病することが多く、約1対2の比率で女性に多くみられます。
 目がまったく開けられないほど重症な例は少ないですが、一見しただけではわからないような軽症例を含めると、日本には少なくとも30~50万人以上の患者さんがいると推定されます。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]ストレスを避け、睡眠不足や過労に注意する
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 疲れたときやストレスがたまったときなど、安静にして目を休め、疲れをとり、眼輪筋の過度な緊張がとれれば症状がおさまることが臨床研究によって確認されています。(1)~(3)

[治療とケア]抗アレルギー薬の点眼を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 角膜や結膜の炎症によるけいれんに対する抗アレルギー点眼薬の効果は、信頼性の高い臨床研究によって確かめられています。(7)(8)

[治療とケア]副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬(やく)の点眼を行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 角膜や結膜の炎症が激しい場合は副腎皮質ステロイド薬の点眼薬を用いることがあります。これの効果は臨床研究によって確かめられています。(6)

[治療とケア]重症の場合は、A型ボツリヌス毒素療法を行う
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] A型ボツリヌス毒素を眼輪筋に注射するのがA型ボツリヌス毒素療法です。A型ボツリヌス毒素は、神経の神経接合部末端から神経伝達物質が放出されるのを防ぎます。その結果、異常な興奮が眼輪筋へ伝わらなくなるので、けいれんがおこらなくなります。この治療の効果は非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。A型ボツリヌス毒素の効果は約1カ月後にもっとも強くなり、2~4カ月程度効果は続きますが次第に弱まります。再注射が必要となる場合もあります。(4)(5)


よく使われている薬をEBMでチェック

筋肉の緊張をやわらげる薬
[薬名]ボトックス(A型ボツリヌス毒素)(4)(5)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 眼瞼けいれんに対するA型ボツリヌス毒素は、非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。

副腎皮質ステロイド薬点眼用
[薬名]フルメトロン(フルオロメトロン)(6)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] まぶたや結膜の激しい炎症がけいれんの原因と考えられる場合に用います。眼瞼けいれんに対する副腎皮質ステロイド薬の効果は臨床研究によって確かめられています。

抗アレルギー薬点眼用
[薬名]アレギサール(ペミロラストカリウム)(7)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]リザベン/トラメラス(トラニラスト)(8)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] アレルギー性の炎症が原因と考えられる場合に用います。いずれも信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
症状が軽い場合は、日常のケアで解消する
 一般的には症状が軽い場合は、副作用の可能性が少しでもある薬物治療は勧められません。ストレスや睡眠不足、過労などによっておこっているということが明らかな場合には、これらの原因をなくすライフスタイルにするように心がけます。たったこれだけでも、けいれんがなくなったり、緩和(かんわ)したりするものです。

A型ボツリヌス毒素の注射が効果的
 もっとも効果的と考えられている対症療法は、ボトックス(A型ボツリヌス毒素)の注射です。けいれんがおこっている眼輪筋の周囲に数カ所、注射します。この治療の効果は非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。
 この方法は、専門医による治療が大前提です。A型ボツリヌス毒素の場合、治療効果は、注射してから約1カ月後にピークに達し、その後徐々に弱まりながら2~4カ月程度続きます。そのため、その後症状が再発した場合は、再注射が必要になってきます。

炎症によるけいれんには点眼液
 まぶたや結膜の炎症が原因のけいれんだと考えられる場合、抗アレルギー薬のアレギサール点眼液(ペミロラストカリウム)やリザベン点眼液/トラメラス点眼液(トラニラスト)が用いられます。症状に応じては副腎皮質ステロイド薬のフルメトロン点眼液(フルオロメトロン)も用いられることがあります。いずれも臨床研究などによって効果が確認されているものです。

病気に対する理解を深め、メンタルを管理し焦らずに向き合う
 眼瞼の運動障害や目の感覚過敏に加えて、抑うつ、不安、不眠など精神症状を訴える人も半数近くあり、うつ病などと間違えられることもあります。また、診断がつかないために引きこもってしまう患者さんもいると推定されています。
 抑うつ感があると症状が悪化するので、心の安定が必要な病気でもあり、メンタルケアが必要とされます。自分自身でメンタルを管理するには、病気に対する理解が非常に重要で、治そう治そうと焦らないようにすることがとても大切です。

(1)Hallett M. Blepharospasm: recent advances. Neurology. 2002;59:1306-1312.
(2)Defazio G, Livrea P. Epidemiology of primary blepharospasm. MovDisord. 2002;17:7-12.
(3)Defazio G, Hallett M, Jinnah HA, Berardelli A. Development and validation of a clinical guideline for diagnosing blepharospasm. Neurology. 2013; 81:236.
(4)Hallett M, Evinger C, Jankovic J, et al. Update on blepharospasm: report from the BEBRF International Workshop. Neurology. 2008; 71:1275.
(5)Simpson DM, Blitzer A, Brashear A, et al. Assessment: Botulinum neurotoxin for the treatment of movement disorders (an evidence-based review): report of the Therapeutics and Technology Assessment Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology. 2008; 70:1699.
(6)石川哲,疋田春夫,北野周作,他. フルメトロン点眼薬の二重盲検法による臨床効果. 医学のあゆみ. 1974;88:442-449.
(7)北野周作,小倉文雄,湯浅武之助. 結膜アレルギー疾患に対する0.1%ぺミロラストカリウム点眼薬の有効性,安全性の検討. あたらしい眼科. 1993;10:323-332.
(8)岩城陽一,長崎比呂志,黒瀬眞一,他. 結膜アレルギーに対するトラニスト(N-5')点眼薬の臨床効果. 臨床と研究. 1993;70:1669-1674.
子どもの病気

出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報

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