矢合(読み)やあわせ

精選版 日本国語大辞典 「矢合」の意味・読み・例文・類語

や‐あわせ ‥あはせ【矢合】

〘名〙
敵味方互いに矢を射合うこと。普通には開戦の矢を敵味方から射込むこと。嚆矢(こうし)として多く鏑矢(かぶらや)を用いる。転じて、開戦すること。
平家(13C前)四「橋の両方の爪に打っ立って矢合す」
② 転じて、一つ物事をなすにあたって、手始めに行なうこと。
俳諧鶉衣(1727‐79)前「風雅に喰寄の他人むきを離れ、けふを麁菜の矢合せとして、雨の夕べ雪のあした、鍋・摺粉木はさはがせずとも」

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改訂新版 世界大百科事典 「矢合」の意味・わかりやすい解説

矢合 (やあわせ)

中世,戦場で敵味方相互に矢を射合う行為。これにより両軍の戦闘が開始される。一般に合戦は両軍対陣し,まず(とき)をあげる。これは気勢をあげて己をふるいたたせる行為であるが,次いで両軍の主将が名乗りをあげ,口合戦,矢合となる。その意味で矢合は開戦の口火を示す宣戦布告の表現であった。矢合にさいして,まず敵陣に向かって鏑矢(かぶらや)が射られた。これを矢合の鏑始めと称した。鏑とは矢の先端にあたる鏃(やじり)のつけ根につけた木・竹の根製の長円形の付属物で,威嚇のための音響を発するように内部は空洞になっており,表面に数個の孔があけられている。《太平記》にも〈菊池五千余騎を率し,浜の西より相近付けて,先矢合せの流鏑をぞ射たりける〉と見えており,矢合にさいし,敵を威嚇するために嚆矢(こうし)としてこの鏑矢が用いられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「矢合」の意味・わかりやすい解説

矢合
やわせ

愛知県稲沢市(いなざわし)の一地区尾張(おわり)国分寺跡(国指定史跡)、矢合観音(かんのん)、円光禅寺(萩の寺)がある。特産の植木や苗木生産は三宅(みやけ)川の自然堤防の微高地に立地し、県内では西尾市福地(ふくち)地区とともに二大産地で、地区内に二つの植木市場がある。

[伊藤郷平]

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