統合失調症(精神分裂病)の一型で,破瓜期,つまり青春期に多く発病するところからこの名がある。始まりは緩慢で,特別な誘因もない。意欲の低下,感情の鈍麻,思考における連合弛緩,自閉傾向など,いわゆる欠損症状が病像の前景を占めながらしだいに高度になり,その間に独語,空笑(ひとり笑い),常同行為などが現れるが,幻覚,妄想,興奮などはほとんど,または断片的にしか見られない。緊張型(緊張病)や妄想型にくらべると治療は困難で,一定の人格変化をあとに残すことが多い。この病型はドイツのヘッカーが師カールバウムの臨床資料をもとに1871年に記述したが,これに対応する病像はフランスでも1852年にモレルにより〈早発(性)痴呆〉として記載されている。この事実は,こんにち統合失調症のもっとも古典的な病型とみなされるものが,歴史的には緊張型や妄想型よりずっとおくれて登場した近代的病型であることを示唆している。
→統合失調症
執筆者:宮本 忠雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…精神疾患の状態像および経過と転帰への注意を促し,症状群Symptomenkomplex,疾患型Typeusの概念を提唱した。緊張病,破瓜病,類破瓜病,蠟屈症などはいずれも彼の命名によるものであるが,とりわけ緊張病は,弟子ヘッカーE.Heckerに記述させた破瓜病とともに,クレペリンの早発性痴呆概念の先駆となった。19世紀のドイツ精神医学を代表する人物の一人。…
…まず,フランスのB.A.モレルがその《臨床研究》(1852)で,若年者に発症し急速に痴呆状態へと進行する精神病を〈早発痴呆démence précoce〉と名づける一方,ドイツではK.L.カールバウムが1874年(63年説もある)に精神運動性の興奮と昏迷という相反する状態をふくむ病像を〈緊張病Katatonie〉と名づけた。またE.ヘッカーが1871年に思春期に始まって感情鈍麻や意欲減退を示しながら欠陥状態へと至る病像を〈破瓜病Hebephrenie〉と命名し,最後にE.クレペリンが1899年の彼の《精神医学教科書》第6版であとの二つをまとめ,これに〈妄想痴呆〉を加えて〈早発痴呆Dementia praecox〉と呼んだ。しかし,症例の観察を重ねていくと,普通の意味の〈痴呆〉が生ずるのでも,つねに青年期に始まるのでもなく,問題は精神機能の分裂にあることから,スイスのE.ブロイラーが〈精神分裂病Schizophrenie〉という新語を使いはじめ,主著《早発痴呆または精神分裂病群》(1911)を通じてこれが世界中へ広まった。…
…破瓜(はか)病を記述したことで知られるドイツの精神医学者。K.L.カールバウムを師と仰ぎ,彼が1863年に提起した破瓜病Hebephrenieの概念をその指示にもとづいて克明に記述し,《破瓜病――臨床精神医学への一寄与》として発表した(1871)。…
※「破瓜病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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