意欲と行動の異常を中心とする特徴的な病態で,その名も,病者の表情が固く,全身が硬直しているところから出た。病像として興奮と昏迷という相反する症状を含み,すなわち一方では反響言語・反響動作・命令自動・常同症などを交じえる激しい多動状態,他方ではあらゆる自発運動の停止・強硬症(カタレプシー)・蠟屈症・拒絶症などからなる無動状態が交互に,あるいは一方だけ反復して現れたりするが,経過は概して短く,数ヵ月以内に回復する。1874年ドイツのカールバウムにより独立の疾患として記述されたが,99年にはクレペリンにより早発性痴呆(ちほう)(のちに精神分裂病と呼ばれた)の一型として位置づけられた。今日の早発性認知症(統合失調症)である。しかしチフスなどの感染症,脳腫瘍,躁うつ病,ヒステリーでも似た病像が現れうるので,むしろ各種の原因から生ずる非特異的な緊張病症候群とみなそうとする立場もいぜん根強い。
執筆者:宮本 忠雄
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統合失調症の一類型の別称。
[編集部]
…精神疾患の状態像および経過と転帰への注意を促し,症状群Symptomenkomplex,疾患型Typeusの概念を提唱した。緊張病,破瓜病,類破瓜病,蠟屈症などはいずれも彼の命名によるものであるが,とりわけ緊張病は,弟子ヘッカーE.Heckerに記述させた破瓜病とともに,クレペリンの早発性痴呆概念の先駆となった。19世紀のドイツ精神医学を代表する人物の一人。…
…緊張病症状群の一つの症状であり,意欲障害に基づくもの。患者はあらゆることを拒否し,反対の行動を示す。…
… 今日の分裂病につながる概念はやっと19世紀後半に相次いで現れるようになる。まず,フランスのB.A.モレルがその《臨床研究》(1852)で,若年者に発症し急速に痴呆状態へと進行する精神病を〈早発痴呆démence précoce〉と名づける一方,ドイツではK.L.カールバウムが1874年(63年説もある)に精神運動性の興奮と昏迷という相反する状態をふくむ病像を〈緊張病Katatonie〉と名づけた。またE.ヘッカーが1871年に思春期に始まって感情鈍麻や意欲減退を示しながら欠陥状態へと至る病像を〈破瓜病Hebephrenie〉と命名し,最後にE.クレペリンが1899年の彼の《精神医学教科書》第6版であとの二つをまとめ,これに〈妄想痴呆〉を加えて〈早発痴呆Dementia praecox〉と呼んだ。…
※「緊張病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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