広義には硝酸アンモニウム(硝安)を主とする爆薬であるが,一般には硝安を主とした炭鉱用検定爆薬をいう。火薬類取締法のダイナマイトとの区別を考慮して次のように定義される。〈硝酸アンモニウムを基剤とし,6%以下のニトロゲルを含有する粉状のもの,もしくはニトロゲルを含有せず,かつ10%以下の過塩素酸塩またはニトロ化合物を含む粉状のものであって,それぞれ減熱消炎剤を含む検定爆薬〉。
炭鉱の坑内には可燃性の坑内ガス(メタンガス)や炭塵(たんじん)が存在する。火薬類の発破の際に,これらのガスや粉塵に引火して坑内爆発が起こることがある。このような災害を防止するために,炭鉱で使う爆薬には検定に合格することが義務づけられている。また,坑内爆発は,爆薬が爆発する際の粒子やガスの温度を下げることによって防ぐことができると考えられている。このような効果をもつ添加物を減熱消炎剤といい,食塩などがこの目的に使われている。
爆薬の坑内ガス着火および炭塵爆発の起こしにくさを安全度といい,検定爆薬は安全度により区分されている。安全度の試験は坑道試験gallery testによって行われる。坑道試験装置は坑道と臼砲(きゆうほう)からなっている。試験の種類は表に示すように4種類あり,ⅠからⅣにいくにしたがって安全度のより高い爆薬となる。Ⅳは参考試験である。試験坑道は鋼鉄製の円筒管で,爆発室(直径1.52m,長さ3.68m)と坑道部(直径1.92m,長さ29.32m)からなり,臼砲は鋳鉄製(直径0.56m,長さ1.50m)である。坑道の中にメタンガス9%または炭塵1.5kgを散布または浮遊させて,臼砲の装薬孔を爆発室の開口部に密着させ,装てん(塡)した400gまたは600gの爆薬を起爆する。ガスの場合は10回,炭塵の場合は5回実験して,1回も着火しなかった場合を合格とする。爆薬量が多いほど着火しやすく,正起爆より逆起爆のほうが着火しやすいことが知られている。溝切り臼砲試験は,着火がより起こりやすいように爆薬包を空気中に露出させる方式である。
硝安爆薬の代表的組成は,硝酸アンモニウム55~88%,ニトロ化合物(TNTなど)7~9%,食塩10~20%,木粉およびデンプン2~10%である。ここで,ニトロ化合物は爆発性を向上させるための鋭感剤兼可燃物として加えられている。硝安爆薬は硝安を主成分としているために吸湿性があり,この欠点はできあがった薬包をパラフィン漬けにするなどの方法で部分的に補われている。
執筆者:吉田 忠雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
広義には硝酸アンモニウム(硝安)を主とする爆薬(ただし、ニトロゲル含有量が6%を超えるものおよびニトロ化合物または過塩素酸塩の含有量が10%を超えるものを除く)であるが、狭義には硝安を基剤とした炭鉱用検定爆薬(一般に安全爆薬という)が硝安爆薬とよばれている。火薬類取締法のダイナマイトとの区別を考慮して硝安爆薬は次のように定義される。すなわち、硝酸アンモニウムを基剤とし、6%以下のニトロゲルを含有する粉状のもの、もしくは、ニトロゲルを含有せず、10%以下の過塩素酸塩またはニトロ化合物を含む粉状の爆薬であるアンモン爆薬に減熱消炎剤を配合したもので、検定試験に合格した炭鉱用の検定爆薬である。
ニトロ化合物は爆発性を向上させるために鋭感剤兼可燃物として加えられている。硝安爆薬は硝安を主成分としているために吸湿性があり、これが問題点とされている。この欠点は、硝安の改質や、できあがった薬包をパラフィン浸(づ)けするなどの方法で部分的に補っている。
[吉田忠雄・伊達新吾]
『経済産業省資源エネルギー庁原子力安全・保安院保安課監修、日本火薬工業会資料編集部編『火薬類取締法令の解説』平成15年改訂版(2004・日本火薬工業会)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…爆発点約1300℃。 2NH4NO3―→2N2+O2+4H2Oこの性質は硝安爆薬として利用されるが,空気中に常温で保存するときはわりあい安定である。実験室では,硝酸をアンモニア水で中和し,液を蒸発濃縮して結晶を析出させてつくる。…
※「硝安爆薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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