日本大百科全書(ニッポニカ) 「硝酸アンモニウム」の意味・わかりやすい解説
硝酸アンモニウム
しょうさんあんもにうむ
ammonium nitrate
硝酸のアンモニウム塩。工業部門では俗に硝安とよばれる。50~70重量%の硝酸をガス状アンモニアで中和することによって大規模に生産されている。無色の結晶で、常圧において5変態をとるが、常温では斜方晶系のβ(ベータ)形がもっとも安定である。きわめて吸湿性に富み、水によく溶け、またエタノール(エチルアルコール)にも溶ける。通常空気中では安定であるが、可燃性物質が混入したり、密閉容器中で加熱、衝撃、摩擦などを受けると爆発することがある。開放状態で加熱すると、その温度により分解反応をおこす。密閉状態で加熱すると、容易に次の爆発反応に移行する。
4NH4NO3―→2NO2+8H2O+3N2
肥料、火薬や爆薬の原料などの用途があるが、寒剤、酵母培養の養分としても用いられる。
[鳥居泰男]