日本大百科全書(ニッポニカ) 「硝酸エステル」の意味・わかりやすい解説
硝酸エステル
しょうさんえすてる
nitrate ester
organonitrate
organic nitrate
アルコールと硝酸が水1分子を失って縮合した化合物の総称。一般式R-O-NO2。一般に加熱または衝撃により爆発しやすく、第5類危険物に指定されていて、自然発火による事故への注意が必要である。加水分解によりもとのアルコールと硝酸になる。火薬、爆薬、ロケット推進剤などに使われるものが多い。
代表的な一価アルコールの硝酸エステルとしては、硝酸エチルがある。この化合物は液体で、揮発性、爆発性が大きすぎるので爆薬としてはあまり使われない。
グリコール、グリセリン、セルロース、ペンタエリトリトール(ペンタエリスリトール)などの多価アルコールの硝酸エステルは、それぞれニトログリコール、ニトログリセリン、ニトロセルロース、ペンスリットの通称でよばれ、爆薬などの用途をもっている。ニトログリセリンはダイナマイトの火薬として用いられる。このほかに硝酸イソソルビドやニコラジルなどの狭心症特効薬も硝酸エステルである。
[廣田 穰]