改訂新版 世界大百科事典 「硫ヒ鉄鉱」の意味・わかりやすい解説
硫ヒ(砒)鉄鉱 (りゅうひてっこう)
arsenopyrite
毒砂ともいう。理想化学式FeAsSの鉱物。Feを置換してCoがFe/Co=1/3まで入る。Co≧Feの場合グローコドートglaucodotの名称が与えられる。As/S比に関しても,0.9/1.1~1.1/0.9の範囲で変動し,S量が多いものは三斜晶系,As量の増加に伴い対称性が高くなり,FeAs11S09では単斜晶系となる。自形結晶は菱形の断面をもつ長柱状,短柱状であるが,塊状をなすことが多い。へき開は明瞭でない。銀白色ないし鋼灰色で金属光沢をもつが,さびると真鍮(しんちゆう)色~灰色となる。条痕は黒色。モース硬度5.5~6.0,比重は6.07。ハンマーでたたくか,火にあぶるとニンニク臭を発する。ヒ素鉱物としては最も多量に存在し,中~高温の気成ないし熱水脈中の早期晶出物として産するほか,接触交代鉱床にも産出する。茨城県高取鉱山,大分県尾平鉱山,岐阜県神岡鉱山などが代表的産地である。三酸化ヒ素の製造原鉱となる。arsenopyriteは,arsenical pyrite(含ヒ素黄鉄鉱)のスペリングがつまったものである。
執筆者:青木 正博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報