社会心理(読み)しゃかいしんり

改訂新版 世界大百科事典 「社会心理」の意味・わかりやすい解説

社会心理 (しゃかいしんり)

個々人の心理とは別に,社会集団が独自の心理をもつという考え方は,群集心理に関してのル・ボン考察などを典型として,いくつかの興味深い考察を生気づけてきた。今日の社会心理学の主流においては,個々人の心理以外に,社会集団が独自の心理をもつわけではない,という考え方が支配的であるので,社会心理ということばは,ほとんど使われなくなっている。けれども,社会集団を形成しているときの人間たちの心理が,個人でいるときの心理とは異なった特質をおびるということは明らかである。このような社会集団を形成している諸個人の心理の独自の相互作用および,このような相互作用の集積としての,社会集団の全体としての心理的反応特性を,社会心理とよぶことができる。社会心理という現象の具体的な内容は,その基体となる社会集団の大小によって異なる。比較的小さな規模の集団における心理現象を〈ミクロの社会心理〉,比較的大きな社会の全体における心理現象を〈マクロの社会心理〉とよぶとすれば,ミクロの社会心理の例として,グループ・ダイナミクスや集団的恍惚,会衆のパニック,集団的創造などの現象がある。またマクロの社会心理の例としては,流行流言世論などの現象が代表的である。社会意識うち,(1)哲学科学,法体系などの観念諸形態として体系化された部分,(2)伝統習俗のように比較的固定化した部分,(3)社会的性格として成員パーソナリティの中に比較的定着した部分を除いた,流動的で非定型な部分が社会心理とよばれる。もちろん社会心理と,上記社会的性格,伝統・習俗,観念諸形態との境界は可変的であり,社会心理はこれらを沈殿し,溶解しまた析出する原溶液のごときものである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社会心理」の意味・わかりやすい解説

社会心理
しゃかいしんり
social psychology

社会意識のうちで,自然発生的に生れ,体系的ではない,日常的な感情,気分,幻想,考えなどをいう。この用語は G.V.プレハーノフによって使用され,社会心理を上部構造の独立的な一カテゴリーと考えた。次に N.I.ブハーリンは,社会心理をイデオロギーのための貯水池ともいうべきものと考え,イデオロギーをもって社会心理の結晶体とみなした。また社会学では,個人心理ではなく,一群の社会成員や組織メンバーに共通して見出される心理状態を社会心理と呼んでいる。群衆心理から集団心理にいたる広い概念である。

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