プレハーノフ(読み)ぷれはーのふ(英語表記)Георгий Валентинович Плеханов/Georgiy Valentinovich Plehanov

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレハーノフ」の意味・わかりやすい解説

プレハーノフ
ぷれはーのふ
Георгий Валентинович Плеханов/Georgiy Valentinovich Plehanov
(1856―1918)

ロシアマルクス主義理論家、ロシア社会民主労働党創立者の一人。タムボフ県の小地主の家に生まれる。1875年19歳で革命運動に参加、農民蜂起(ほうき)を通じて専制政治打倒を目ざした秘密組織「土地自由」の指導者の一人となった。1880年に亡命、フランスとドイツの労働運動を知り、ナロードニキ立場を捨て、1882年『共産党宣言』をロシア語に翻訳出版。1883年秋スイスでロシア最初のマルクス主義組織「労働解放団」を創設、マルクス主義の普及活動を組織した。マルクス‐エンゲルスの著作の翻訳も行い、自らも「社会主義と政治闘争」(1883)など多くの論文を執筆。1900~1903年、「経済主義者」に反対しレーニンとともに新聞『イスクラ』と雑誌『ザリャー』を編集、ロシア社会民主労働党第2回大会の準備、開催に努力した。党大会ではレーニンの側にたったが、大会後メンシェビキ指導者の一人となった。1905年の革命に際しては自由主義者との同盟を要求し、12月の武装蜂起を非難した。しかし続く反動期にはボリシェビキとともにメンシェビキ多数派に反対したが、第一次世界大戦に際しては祖国防衛、戦争協力の立場をとった。1917年二月革命時に帰国十月革命に反対したが、反ソ的立場はとらなかった。1918年5月、フィンランドのピトケヤルブイのサナトリウムで、結核のため死去した。著書に『史的一元論』(1895年に別のタイトル発表)などがある。

[木村英亮 2015年10月20日]

『内村有三訳『社会主義と政治闘争』(大月書店・国民文庫)』『木原正雄訳『歴史における個人の役割』(岩波文庫)』『川内唯彦訳『史的一元論』全2冊(岩波文庫)』『蔵原惟人・江川卓訳『芸術と社会生活 他1篇』(岩波文庫)』『S・バロン著、白石治朗他訳『プレハーノフ』(1978・恒文社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プレハーノフ」の意味・わかりやすい解説

プレハーノフ
Plekhanov, Georgii Valentinovich

[生]1856.12.11. グダロフカ
[没]1918.5.30. テリヨキ
ロシアの革命家,思想家。ロシア・マルクス主義の父。タンボフ県の小貴族の家に生れる。 1873年ボロネジのギムナジウム卒業後,ペテルブルグ鉱山大学に入学。 76年革命運動のために中退。最初はナロードニキ主義の立場に立ち,「土地と自由 (党) 」の結成に参加したが,党がテロ活動に走るようになるや,それに反対して分派 (「全土地割替」派) を結成。 80年逮捕を逃れて国外に脱出。 1917年まで続く亡命生活の大部分をジュネーブで過した。 1883年 P.B.アクセリロード,V.I.ザスーリッチらとともに,ロシア最初のマルクス主義組織「労働解放団」を結成。『社会主義と政治闘争』 Sotsializm i politicheskaya bor'ba (1883) ,『われらの見解の相違』 Nashi raznograsiya (85) などを著わして,ナロードニキ主義と決別,ロシア・マルクス主義の基礎を築いた。 95年スイスに彼を訪れたレーニンと会い,ロシア国内のマルクス主義者と連絡を取る一方,「合法マルクス主義」や E.ベルンシュタインの修正主義などとの闘争を継続。 98年にはレーニン,マルトフらとロシア社会民主労働党を結成。さらに 1900年には最初のマルクス主義新聞『イスクラ』を創刊してマルクス主義の宣伝を行なったが,プロレタリアート独裁の問題,ロシア労働者階級の革命的可能性,労働者階級と農民階級の同盟の問題などをめぐってレーニンとの間に見解の対立が生じ,03年第2回党大会 (ブリュッセル,ロンドン) で党が分裂した際,プレハーノフは当初レーニンを支持しながらも,結局は,いわゆるメンシェビキに属することとなった。その後は政治活動を継続する一方,哲学,芸術,文学,歴史などの研究に専心しすぐれた業績をあげた。第2インターナショナルの重要なメンバーとして,日露戦争には敗北主義の立場をとったが,第1次世界大戦では,ドイツ軍国主義の勝利はロシアの革命運動に不利と考え,連合国側を支持した。二月革命が起るとロシアに戻り,臨時政府を条件付きで支持,ボルシェビキの権力奪取の志向に反対したため,一時「人民の敵」と断罪された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

期日前投票

期日前投票制度は、2003年6月11日公布、同年12月1日施行の改正公職選挙法によって創設された。投票は原則として投票日に行われるものであるが、この制度によって、選挙の公示日(告示日)の翌日から投票日...

期日前投票の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android