社会福祉分野で働く者に関する国家資格。1987年5月成立の「社会福祉士及び介護福祉士法」(昭和62年法律第30号、1988年4月施行)で定められた。厚生省(現厚生労働省)は、「民間企業活動であるシルバーサービス」に要請される「一定の倫理とサービス水準の確保」を「担保するものとして、これに従事する者の資格を公正な形で確保するための資格制度の導入が不可欠」として、同法の狙(ねら)いを説明した。2007年(平成19)の法改正により、(1)定義規定、(2)義務規定、(3)資格取得方法について見直しが行われた。
毎年1回厚生労働大臣が行う社会福祉士試験(国家試験)に合格し、社会福祉士登録簿に登録した者は、社会福祉士と称することができる。社会福祉士は専門的知識・技術をもって身体上や精神上の障害または環境上の理由で日常生活に支障がある人の福祉に関する相談、助言、指導、福祉サービス提供者または医師その他の保健医療サービス提供者等との連絡および調整、その他の援助を行うことを業とする者をいう(2条1項)。この登録をしていない者は社会福祉士と称することはできない(名称独占)が、医師、看護師、弁護士などのような業務独占ではない。なお社会福祉士試験受験資格は、本法で細かく規定され(福祉系4年制大学卒業、社会福祉士養成施設卒業など)、福祉系大学ですら厚生労働大臣指定の科目の履修者であることが要求されている。社会福祉士は、社会福祉施設、社会福祉協議会、病院、地域包括支援センター、福祉事務所等の行政機関で相談業務につくほか、独立型社会福祉士事務所を開設する場合もある。
国家試験受験者数は4万2882人、うち合格者数は1万1282人である(2011年度第24回試験)。2011年3月末時点での社会福祉士登録者は13万8694人である。多様化、高度化する福祉ニーズに対応すべく、社会福祉士は質、量ともにその充実が求められているが、そのためには社会福祉士の労働環境整備、資格取得後のキャリアアップの仕組みづくりが必要である。
[小川政亮・矢嶋里絵]
『21世紀の福祉専門職を考える会編『社会福祉士をすべての保健・医療・福祉機関に!』(1997・日本地域社会研究所)』▽『社団法人日本社会福祉士会著『社会福祉士国家試験模範解説書』(1999・筒井書房)』▽『ヴィットインターナショナル著『福祉にかかわる仕事』(1999・ほるぷ出版)』▽『秋山智久著『社会福祉実践論――方法原理・専門職・価値観』(2000・ミネルヴァ書房)』▽『岡田明・宮本文雄・中山哲志編『福祉心理学――援助を必要とする人のために』(2002・ブレーン出版)』
(中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語「カスタマーハラスメント」の略称。顧客や取引先が過剰な要求をしたり、商品やサービスに不当な言いがかりを付けたりする悪質な行為を指す。従業...
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
6/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
5/20 小学館の図鑑NEO[新版]昆虫を追加