古代において将軍の出征に際し天皇より賜る刀をいう。軍防令に〈凡(およ)そ大将,征に出でなば皆節刀を授けよ〉とあり,その義解に〈凡そ節は髦牛(ぼうぎゆう)(長毛の牛)の尾を以て為(つく)る。今劔を以て代う。故に節刀と曰う〉とあるように,将軍が天皇から征討に関する全権を委任された節(しるし)の刀のこと。将軍に准じて遣唐大使など遣外使節に授けられたこともあるが,いずれの場合も,使者が部下に対する生殺与奪の権を授けられたしるしであり,将軍・大使らの,部下に対する処分は事後報告で済まされるものとされた。大宝令制定後,蝦夷・隼人などの征討には節刀を賜る例となり,10世紀の平将門の乱にもこのことがあったが,その後は絶えて見えず,駅鈴あるいは錦旗を賜る例となった。幕末,孝明天皇は攘夷の節刀を将軍徳川家茂,次いで慶喜に授けようとして辞退され,次いで明治天皇は東征大総督有栖川宮熾仁(ありすがわのみやたるひと)親王に節刀を授けたが,これが節刀を賜る最後となった。節刀は任が終われば奉還するのが例である。
執筆者:黛 弘道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
律令制下,遣唐使や出征の将軍に授けられた,指揮官の権威を示す象徴としての刀。701年(大宝元)遣唐使粟田真人(あわたのまひと)に授けたのが初例。節刀を授けられることは,天皇大権である死罪決定権を含む刑罰権を与えられることを意味したので,強大な指揮権の支えとなった。任を終えて帰京すれば返還した。律令制以前から出征の将軍にはなんらかの武器を授けていたとみられるが,中国で使者と将軍に授けられた節あるいは斧鉞(ふえつ)の制をうけ,制度的に整えられて節刀となった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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