(読み)キ

デジタル大辞泉 「箕」の意味・読み・例文・類語

き【箕】[漢字項目]

人名用漢字] [音]キ(呉)(漢) [訓]み
農具の一。み。「箕裘ききゅう
両足を前に伸ばした座り方。「箕踞ききょ箕坐きざ

き【×箕】

二十八宿の一。東方の第七宿。射手いて座の四星をさす。みぼし。箕宿。

み【×箕】

農具の一。穀物を入れ、あおって、その中の殻・ごみをふるいわけるもの。ふじづる・柳・割り竹などで編んで作る。

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精選版 日本国語大辞典 「箕」の意味・読み・例文・類語

み【箕】

  1. 〘 名詞 〙 穀類をあおりふるって、殻やごみをよりわける農具。また、年中行事などで供具としても使う。
    1. 箕〈福富草紙〉
      箕〈福富草紙〉
    2. [初出の実例]「箕(み)落ちし処は、仍て箕形丘(みかたをか)と号け」(出典:播磨風土記(715頃)餝磨)

き【箕】

  1. 二十八宿の東方第七宿。いて座のエプシロン星をふくむ四星。箕宿。みぼし。みのぼし。〔易林本節用集(1597)〕〔詩経‐小雅・大東

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普及版 字通 「箕」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 14画

[字音]
[字訓] み・ちりとり

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 形声
声符は其(き)。其は箕の初文でその象形、箕はその形声字。〔説文〕五上に「簸(は)なり」とあり、穀物の塵などをはらう器。金文字形には、箕を簸揚する形、また女を加えるものなどがある。家妻を謙称して、箕掃の妻という。

[訓義]
1. み。
2. ちりとり。
3. 両足を前に伸ばして坐る形。

[古辞書の訓]
和名抄〕箕 美(み) 〔名義抄〕箕 ミ 〔字鏡集〕箕 ミ・クキ・ヒルミ

[部首]
〔玉〕に部首とし、簸など二字を属する。

[熟語]
箕潁・箕裘・箕踞箕倨・箕股箕坐・箕星・箕掃箕箒箕帚箕疇・箕斗箕伯・箕尾箕賦・箕風・箕服箕畚箕斂
[下接語]
騎箕・弓箕・挙箕・乗箕・斗箕・南箕・奉箕・揚箕・柳箕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「箕」の意味・わかりやすい解説


穀物の脱穀、選別、調整、運搬に使用される農具。箕の文字は、本来、「其(き)、基」とともに「四角」を意味し、甲骨文では、平らに編んだ四角な大ざるのような用具のことで、この四角な箕が中国華北地域に発し、朝鮮を経て伝えられたものである。わが国では、奈良県の唐古(からこ)遺跡から竹製の箕と思われるものが出土したり、古墳の副葬品に醸造用の箕を模したものがみられ、箕が古くから使われていたことが察せられる。普通、箕は、藤(ふじ)づるやヤナギなどを縦とし、へぎ板や割り竹を横にして、むしろ編みにし、一方を開け口とし、他の三方は囲んで木や竹の縁をつける。使い方は、穀物や豆類などを入れ、両手で縁を持って揺り動かし、風にあおりながら穀物と塵埃(じんあい)や籾殻(もみがら)などをえり分ける(これを簸(ひ)るという)。箕は、産地ではその用途によって、穀物の調整に使われるものを穀箕(こくみ)、製茶用を茶箕、製粉用を粉(こな)箕、土運びや砂利運びに使うものを雑(ざつ)箕などといって区別している。また製作材料により、板箕、皮箕、竹箕、藤箕などの種類がある。板箕は縁まで板でつくり、皮箕は木の皮をはぎ、これを生(なま)のうちに折って箕の形にとじたもの。竹箕はタケで主要な部分を網代(あじろ)編みか、ざる編みにしたもの。藤箕はイタヤ、ウルシ、シノダケなどに藤づるを織り込んだもので、じょうぶで軽いので全国的に用いられた。箕は五升(しょう)箕、一斗(と)箕、一斗五升箕などの規格があり、箕つくり、箕なおしとよばれる山窩(さんか)など山に住む人々によって供給されることが多く、山形県の次年子(ずねんこ)、代(たらのきだい)など、東北地方には、村中が箕づくりを業としている所もあった。

 一方、箕に関する俗信や呪法(じゅほう)も多く、たとえば、箕を裏返しにするのは不幸のあったときで、普段箕を裏返しにしておくと縁起が悪いといって忌み嫌った。また山形県地方では、嫁入りに一升枡(ます)を入れた箕を嫁の頭上にのせたり、鹿児島県の漁村で箕立てといって、昼間夫婦が同衾(どうきん)しているときには、箕を門口に立てるという習慣があった。東京浅草のお酉(とり)様の土産(みやげ)に商売繁盛の縁起物として、熊手(くまで)と箕を買ってくることはよく知られている。なお、箕との関係で、南九州から沖縄など南西諸島にかけて使われているバラとよぶ脱穀用・収穫用の網代円板形のざるは、箕に類似のもので、注目に値する。

[宮本瑞夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「箕」の意味・わかりやすい解説

箕 (み)

穀物や豆類を入れ,両手で揺り動かし,風であおって皮やぬかなどをふるい分ける農具。《和名抄》にも〈和名美,除糞簸米之器也〉とある。奈良県の唐古遺跡から竹製の箕と推定されるものが出土しており,古くから使われていたことがわかる。箕は竹でちり取り型に編んだものが多いが,木製や竹製のものに藤や桜の皮を緯(よこいと)に入れてがんじょうにしたものもある。製作や補修には特別の技術を要するため,〈箕作り〉や〈箕直し〉と呼ばれる特別な人々が村々を訪れて注文に応じていた。箕はインド,中国,朝鮮などアジア大陸部から日本まで見られるが,奄美や沖縄地方にはなく,代りにサンバラなどと呼ばれる円形の底の浅いざるが使用されている。この円形のざるはインドネシア,台湾など東南アジア島嶼(とうしよ)部から九州南部まで分布し,箕と同じ機能を果たしている。

 箕は穀物の選別や容器としての用途のほか,年中行事で神供の容器になったり,呪術や儀礼にも多く使われる。また誕生や死の儀礼に用いられ,初の誕生祝に,幼児に餅を背負わせて箕の上に立たせたり,身体の弱い子どもを儀礼的に捨てたり拾ったりするときにも箕を使う。また難産で失心した産婦を正気づかせたり,死者の魂呼びの際にも箕をかぶったりふるってその人の名前を呼ぶ風があり,同齢者が死んだ場合には箕をかぶって死の感染を防いだ。ものもらいを治す呪いでも井戸に箕を少し見せて,治れば全部見せるといって祈願する。このように,箕は穀物の選別からさらにこの世と霊界との間の霊魂の交換にもかかわっている。このほか,箕は大晦日のミタマノメシ,小正月の穂垂れ,十五夜の供物などを供える容器とされ,正月の歳神(としがみ)迎えや11月丑の日の田の神迎えには,臼の上に箕をのせて神座とする所もある。また漁村などで昼間夫婦が同衾する際に訪問者が来ないように門口に箕を立てて合図とした。箕は霊力ある道具として,この世と霊界を分離したり結合したりもするのである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「箕」の意味・わかりやすい解説


穀物の選別や運搬に使う農具。竹皮,ふじ皮,桜皮などを編んで平らな容器状にし,周囲に竹や細木を結んでU字状の縁をつけたもの。小量の穀物を入れ,両手で軽くあおると比重の大きい穀類が残り,砕米,籾殻,塵埃などの夾雑物はU字状の縁のない部分からふるい分けられる。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【呪】より

…まじないはいわば目に見えない世界との交渉であるから,それを可視的なものに転換するために呪物がよく用いられる。民俗信仰においては,箕,ほうき,櫛,草履,臼,石,豆,米,針などの日常生活に深いかかわりをもつものが,その機能や形などの一部を抽象化して象徴的に利用されることが多い。穀物と塵芥をふり分ける箕は,この世と異界をふり分けるものであり,また塵芥を掃き出すほうきは赤子をこの世に出す呪物や長居の客を家の外へ出す呪物として使われ,さらに魔よけにも使われる。…

【箕作】より

は《和名抄》に《説文》を引いて,〈米などの穀物を簸(ひ)て殻,塵などを分け除く器〉とある。ところが《和漢三才図会》には,箕は俗にいう塵取(ちりとり)のことで同じ形をしていても大小によって区別があるとした後,米を簸る箕について,〈泉州上村より多く之を作り出す。…

※「箕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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