ヒポコンドリーともいう。ギリシア語で〈肋軟骨の下〉を意味したヒュポコンドリオスhypochondriosという語が,2世紀にガレノスによって初めて病名として用いられた。これが,日本の精神医学者呉秀三により心気症と訳された。実際には病気でないのに,心身の不全感に悩み,重篤な疾患ではないかと恐れる状態をいい,神経症の一型として出現する(心気神経症ともいう)。神経症の場合,いわゆる神経質な性格特徴をもつ者が多く,心身の些細な不調に注意が集中しやすく,そのためそれにこだわり,さらに注意が集中して,その不調は重篤なものと感じられる。実際に病気でないのに病気と確信するものは,心気妄想hypochondriacal delusionと呼ばれ,うつ病や統合失調症などにみられる。癌,梅毒などが妄想の対象となりやすいが,〈脳が腐っている〉〈内臓が逆転した〉などという不快な異常体感を伴ったグロテスクな内容が出現することもある。
執筆者:臼井 宏+野上 芳美
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神経症の一種で、ヒポコンドリアHypochondriaともいう。客観的にはなんら身体的異常が認められないのに、頭痛、めまい、胃が重い、脱力感など、主観的にさまざまな異常を感じて、病気ではないかと気に病むことを特徴とする。同時に不眠、注意集中困難、意欲減退などの精神的な症状を訴えることもある。これらの症状は劣等感、無力感、あるいは攻撃性や不安など、精神的なものが身体の部分と結び付いた形で表現されているとみられる場合が多い。心気症の患者は、診察した医師から身体的な病気はないと説明されても納得できず、同じ訴えを繰り返して数か所の医師を転々とすることが多い。なお、ときに統合失調症(精神分裂病)やうつ病の症状の一つとして現れることもある。
[岩崎徹也]
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…彼は神経症を現実神経症と精神神経症とに区別したが,小児期からの心理的葛藤ではなく,現実の性的活動が不適切なことによる生理的緊張の集積の結果,自律神経症状や情動障害を呈する一群があると考え,それを現実神経症とした。これには神経衰弱と不安神経症が含まれ,神経衰弱は過剰な性活動のため,不安神経症は性的興奮が十分に発散されないための中毒と考えられ,のちに心気症もこれに加えられた。これに対し,精神神経症には転換ヒステリー,不安ヒステリー,強迫神経症が含まれ,これらは性衝動をめぐる葛藤に起因するものであり,性衝動の発達段階と抑制機制とによって象徴的な症状が形成されると理解された。…
…身体症状が不安によるものと自覚されず,心臓疾患などを疑って内科を訪れる人も多い。(2)心気神経症 心身の状態に過度の注意を向け,それにこだわり,健康の不全感に悩むもので,心気症ともいう。さまざまな身体的愁訴がみられる。…
※「心気症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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