純系説(読み)ジュンケイセツ(その他表記)pure-line theory

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精選版 日本国語大辞典 「純系説」の意味・読み・例文・類語

じゅんけい‐せつ【純系説】

  1. 〘 名詞 〙 一九〇三年デンマークのヨハンセンが提唱した遺伝学上の説。集団が数種の純系の混合であれば、選択で変異を一定方向へ向けられるが、純系になってしまうと選択は無効で、環境の影響による変異しか残らないとする。近代遺伝学に大きな影響を与えた。

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改訂新版 世界大百科事典 「純系説」の意味・わかりやすい解説

純系説 (じゅんけいせつ)
pure-line theory

集団の構成が雑多であるときには選抜によって一定の方向に変異をかたよらせることができるが,集団が純系に近づけば,内部には環境による変異のみが存在し,選抜は無効であるという説。W.L.ヨハンセン(1903)がインゲンマメ重量に関する選抜実験を基に提唱した。市販マメの重さを測定すると連続的な変異を示すが,これをいくつかの階級分け,その子孫のマメの重さを測ると重い階級の子孫の平均は全体の平均より重く,軽い階級の子孫の平均は軽かった。つまり重いマメを選抜した効果はあった。しかし自家受精によって得られた純系内で重いものと軽いものを分けて播種(はしゆ)し,その子孫を調べると差はなかった。純系化により遺伝的変異がなくなり,淘汰は働かなくなったのである。このような実験から生物個体には遺伝する変異と環境の影響による変異(彷徨(ほうこう)変異)があり,多くの遺伝子型の混合である集団において選抜は有効であるが,遺伝的に均一な純系に対しては選抜は無効であることを示した。これは選抜は決して遺伝的な変異を引き起こせないことを意味し,当時の遺伝子説において遺伝子自身の安定性についての基礎を与えた点に歴史的意義がある。
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