紫外線を光源として撮影する写真および被写体に紫外線を照射し,被写体から発する蛍光によって撮影する写真の総称。後者は蛍光写真fluorographyと呼ばれる。紫外線を光源として写真撮影を行う場合,ハロゲン化銀乳剤を使った写真乾板やフィルムは,波長200~300nm以上ならば感光するので撮影可能である。しかし,撮影に使うカメラ,顕微鏡,分光器などのふつうの光学系(レンズなど)は短波長の紫外線を吸収するため,使用する波長領域の紫外線を透過できる材料の選定が重要となる。また,波長200nm以下の紫外線で写真を撮影するにはゼラチン含有量の少ない写真感光材料を使う。紫外線で撮影する写真は,文書の鑑定,鉱物の撮影,分光写真など科学用に主として使われ,一般の風景などを撮影すると画像コントラストが低くなり,もやがかかったような写真になる。まれに航空写真で地表状況を解析する場合に用いた例もある。
一方,紫外線によって発する蛍光を用いて撮影する蛍光写真も主として科学用であるが,この場合には発生する蛍光に合わせてカラーフィルムや黒白感光材料を選ぶ。
執筆者:友田 冝忠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
特定の波長の紫外線を利用して撮影する写真。一般の写真は波長域でおよそ390~700ナノメートルの可視光において撮影されるが、これより短い波長域である紫外線に対しても写真フィルムは強い感光性をもち、また物質の紫外線に対する反射率は可視光に対するそれとはまったく異なった様相で特異な検出能力をもつことから、判別写真、鑑識写真、分光分析、紫外線顕微鏡、天体観測などの科学分野において、紫外線写真は重要な写真技術として利用される。
とくに290~390ナノメートル付近を用いる近紫外線撮影に実用性があるが、紫外線域でより高い感度をもつフィルムの選定、高コントラストに仕上げるフィルムと現像液の選定、可視光を吸収カットする紫外線透過フィルターの使用、また紫外線吸収の強い一般光学ガラスによるレンズは使えないため、人工蛍石(ほたるいし)や人工水晶を用いた特殊レンズの利用、紫外線光源として有効な水銀放電灯の使用など、一般写真撮影に用いる機材とはかなり異なる。
[小池恒裕]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…(5)は可視光線以外の電磁波を利用する撮影法。赤外線(赤外線写真),紫外線(紫外線写真),X線(X線写真),γ線,β線の利用がおもなもの。可視光線ではあるが,シュリーレン写真や偏光写真も,電磁波の特徴を巧みに利用した観察方法となっている。…
※「紫外線写真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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