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給付行政 きゅうふぎょうせい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

給付行政
きゅうふぎょうせい

1930年代にドイツの E.フォルストホフにより提唱された概念。給付行政は,秩序維持行政とは異なり,経済的,社会的,文化的な公共の利益の増進のために,市民に対して給付を提供したり公共施設を設置することによって,市民に奉仕するものである。このなかには,一般的には,配慮行政 (交通運輸施設,電信電話設備,ガス水道電気供給,汚物処理,下水処理,教育文化施設,病院など) や,社会行政 (社会保障,社会援助など) および促進行政 (資金補助) などが含まれる。給付行政は原則的には自由と財産への侵害を含まないで,授益的に作用するが,民主主義原理などから行政による給付の提供は法律の根拠を必要とする。しかし,これに対して予算で十分であるという説もある。実際には給付行政の重要な領域 (社会行政など) はすでに法律的に規律されている。市民にとって最も身近な地方公共団体の給付行政は,条例やいわゆる営造物利用規則などによって規律されている場合が多い。また給付行政は公法的にも私法的にも形成することができる。しかし給付の提供が,たとえば明確に法律によって規律されず,あるいは私法上の形式で行われようと,給付行政はまったく自由になされてよいのではなく,基本的人権 (特に平等権) や比例原則などに拘束される。現在,給付行政においてどのように市民の参加を保障するかが重要な課題になっている。しかし給付行政の観念については,その内容の多様性,あるいは給付行政概念を積極的に承認しようとする論者が,多くの場合,福祉国家論を無批判的に承認していることから,イデオロギー性に問題があることなどを理由に,批判的な学説も見受けられる。

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世界大百科事典 第2版の解説

きゅうふぎょうせい【給付行政】

行政法学上の観念であるが,もともとは,ドイツ行政法学で展開されてきたleistende VerwaltungまたはLeistungsverwaltungという概念(その提唱者はE.フォルストホフ)を日本に紹介するに際して用いられた訳語である。紹介されたのは,第2次世界大戦後のことであるが,近年では,日本の行政法の教科書等でもこの観念を用いている例がかなりみられる。 給付行政は,公行政の分類上の概念の一つであって,市民の自由の保障を旨とする市民的法治国では,行政は,社会公共の秩序を維持するための権力的活動を中心とするのに対して,現代国家においては,行政はそれにとどまらず,国民の生活を支え,あるいはその福祉を増進するため,各種の便益を提供する,いいかえれば,給付することを重要な任務とするようになったことに対応して構成された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

給付行政
きゅうふぎょうせい

人々の生存に不可欠な役務ないし財貨を提供する行政、いいかえれば、国民の生存配慮のために行われる行政をいう。もともと行政活動は、社会秩序を維持するための秩序維持ないし侵害行政と、そのための財務行政を中心としていたが、資本主義社会の発展とともに、個々人の生存のために国家や公共団体の積極的な配慮が必要となってきた。これに着目したのがドイツ行政法学の大家E・フォルストホッフ(『給付主体としての行政』1938)であった。給付行政の典型領域は社会保障、公共施設や公企業などによる役務や財貨の提供を行う供給行政、資金補助行政などの助成行政の三つである。この領域は、権力を用いる場合もあれば、非権力的に行うこともできる特色をもっている。法治行政の原則、補完性の原則が給付行政の領域でどこまで適用されるかなどが争われており、この領域を一つのまとまった法領域として統一的に構成することに疑問をもつ説も多い。[阿部泰隆]

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世界大百科事典内の給付行政の言及

【行政】より

…第2の分類法は,いわば性質別分類である。まず,国民の権利を制限し国民に義務を課す規制行政と,国民に便益を提供する給付行政とに大別する。そのうえで,この規制行政を免許行政,許認可行政,検査検定行政等々に細分し,給付行政のほうはこれを資金交付行政,公物行政,営造物行政等々に細分していくといった分類法である。…

※「給付行政」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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