小・中学校,工場,病院などで児童,生徒,従業員,患者などに食事を供すること,また,その食事をいう。同一条件下の人間集団にたいして同一内容の食事を有償または無償で,その全員に提供するもので,工員を対象とする工場給食は大正期後半に製糸工場ではじめて行われ,入院患者にたいする病院給食は第2次大戦後に行われるようになった。給食の語自体は第2次大戦後一般的に使われるようになったものだが,実質的には古くから存在したはずである。飢饉のさいの施行(せぎよう)や災害時の炊出しもその一形態であろうし,平時のものでは平安期から宮中の大饗(たいきよう)などのさい下級職員たちに給付された屯食(とんじき)なども,給食の一種と考えることができよう。いずれにせよ,切り詰められた時間や予算内での大量調理によるものだけに,料理内容は低下しがちである。歴史的に見て,そうした大量調理の記録はあまりなさそうであるが,江戸前期に存在したきわめて興味ある事実を井原西鶴が書きのこしてくれている。《西鶴織留》巻四の〈諸国の人を見しるは伊勢〉に描かれた参宮客相手の御師(おし)の家の調理場風景がそれである。2000~3000人分といった大量の食事,それも二の膳つきというのをわずか20人ほどでやってのける早業のからくり,中でもおもしろいのは焼魚である。〈肴(さかな)は何によらず二千人の焼物,然もやき立(たて)を出す事,あまり不思儀(ふしぎ)なり。火鉢五十も有(ある)か,又は広庭に二十間(けん)も溝を掘(ほり)て焼叓(やくこと)かと思ひしに,是も三人して鼻うた(歌)にて埒(らち)をあけける〉とあって,さて,どうしたかというと,四角な籠に20尾ずつくらいの魚を入れて,大釜にぐらぐらわかした湯に浸し,ざっとゆであげて長板の上に並べる。一方には火鉢をおいて,その上で左官の使うこてのようなものを焼いておき,それで板の上の魚の片身だけをざっとなでて,そのまま膳に出すというのである。ガスバーナーで表面をこがした焼豆腐そこのけの調理法で感嘆させられるが,昔から団体客の宴会料理とはこうしたものだったのであろう。
→学校給食
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…児童,生徒らの心身の健全な発達と国民の食生活の改善に寄与するために,学校教育活動の一環として集団的に実施される給食を指す。この目的を実現するため〈学校給食法〉(1954公布)は,学校給食の目標を,(1)食事についての正しい理解と望ましい習慣を養う,(2)学校生活を豊かにし明るい社交性を養う,(3)食生活の合理化,栄養の改善および健康の増進を図る,(4)食糧の生産・配分・消費について正しい理解に導くとしている。…
…そこで,他人に好意をしめし,もてなすために,飲食を提供することがおこなわれてきた。 いっぽう,本来的な共食集団から一時的に離れて食事をしなくてはならない人々の集団のために,一括して食事を用意し,共食させる集団給食がある。軍隊,職場,病院などにおける給食がその例である。…
※「給食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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