大饗(読み)タイキョウ

デジタル大辞泉 「大饗」の意味・読み・例文・類語

たい‐きょう〔‐キヤウ〕【大×饗】

《「だいきょう」とも》
盛大な饗宴
平安時代宮中または大臣家正月に行った大がかりな宴会二宮にぐう大饗大臣大饗恒例のものとした。おおあえ。

おお‐あえ〔おほあへ〕【大×饗】

たいきょう(大饗)

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精選版 日本国語大辞典 「大饗」の意味・読み・例文・類語

たい‐きょう‥キャウ【大饗】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「だいきょう」とも )
  2. 年中行事の一つとして行なわれた、貴族社会の大饗宴。恒例のものに二宮(にぐう)の大饗、摂政・大臣の大饗があり、臨時のものに任大臣の大饗がある。
    1. [初出の実例]「左大臣殿大饗如常」(出典:貞信公記‐延喜七年(907)正月四日)
    2. 「宣旨など持てまゐり、大饗のをりの甘栗の使などに参りたる、もてなし」(出典:枕草子(10C終)八八)
  3. 賓客などをもてなす盛大な饗宴。大饗応。また、その膳部、馳走。
    1. [初出の実例]「堺に相迎て美をして大饗す」(出典:将門記(940頃か))
    2. [その他の文献]〔周礼‐春官〕

大饗の語誌

( 1 )「大饗」「大御饗」の語が記紀に見え、「みあへ」「おおみあへ」と訓読されている。もともとあった饗宴名に漢語があてられ成立したものか。
( 2 )二宮(中宮東宮)大饗は「類従国史‐七一・二宮饗宴‐天長七年正月三日」に「群臣賀皇后宮。賜被衣、又賀皇太子、宴賞如常」と見えるのが記録の上では古い。期日は正月二日。
( 3 )大臣大饗は大臣に任ぜられた時と、毎年の正月の二種がある。任大臣大饗は任大臣の儀が行なわれたその日に行なわれるもので期日は不定。正月の大饗は左大臣は四日、右大臣は五日を式日としていたが、大臣に任ぜられた翌年に限って行なうという傾向も生じた〔江家次第‐二〕。


おお‐あえおほあへ【大饗】

  1. 〘 名詞 〙 盛大な宴会。中古、宮中で例年、または臨時に行なわれた饗宴。たいきょう。
    1. [初出の実例]「はやあら玉の四方拝〈略〉三日・四日・七日に打つづき、朝勤・大饗(オホアヘ)白馬(あをむま)の」(出典:浄瑠璃・百合若大臣野守鏡(1711頃)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「大饗」の意味・わかりやすい解説

大饗 (だいきょう)

内裏または大臣家で正月に行われた年中行事。二宮大饗,大臣大饗,任大臣大饗などがある。二宮大饗は,正月2日に二宮(后宮,太皇太后皇太后,中宮をふくめた後宮と東宮)に群臣が拝賀した後,玄輝門の西廊・東廊で饗宴が行われた。大臣家の大臣大饗は,主として正月4日,5日に行われ,大臣家は請客使を遣わして第一の正客の尊者を迎える。尊者は親王の場合が多く,朝廷からは蘇甘栗(そあまぐり)使が甘栗などを持って来る。二宮大饗と大臣大饗は恒例の正月行事であり,任大臣大饗は,大臣に任官した者が正月私邸において行う臨時の大饗をいう。大臣大饗は藤原氏の場合,祖先の冬嗣より伝わる朱器台盤を用いる。これは藤原氏の氏長者としての意識を強めるためのものである。また,藤原氏の勧学院の学生が参賀に来る。拝礼の後,饗宴が開かれ,勧盃の儀につづいて,雅楽寮が音楽を奏し,舞がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大饗」の意味・わかりやすい解説

大饗
たいきょう

古代に行われた饗宴儀礼で、大規模な宴会をいう。大饗には、その主催者によって、二宮(にぐう)(東宮と中宮)大饗と大臣大饗とがあった。前者は皇族のもので、宮中で催され、後者は臣下の大饗で、それぞれの邸宅で行われた。また年始や、なにかの就任式などのときに行われる臨時の大饗、あるいは皇太后などの大饗もあった。

 正月の二宮大饗は天皇の元日節会(がんにちのせちえ)にあたる行事で、正月の2日に行われた。大臣大饗は臣下の行う饗礼としては最大規模のもので、摂関家がその象徴として有した朱器台盤もこのとき使用された。正月の大臣大饗は4、5日ころに行われていたが、しだいに遅くなり、10世紀の末からは20日以後に行われるようになった。

[酒井信彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大饗」の意味・わかりやすい解説

大饗
たいきょう

平安時代,公家によって行われた大饗宴。 (1) 毎年1月2日,群臣が中宮,東宮 (→春宮 ) に拝賀して饗禄を賜わる二宮大饗,(2) 毎年1月摂関大臣家で催す大臣家大饗,(3) 新任大臣が供応する大臣大饗などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の大饗の言及

【もてなし】より

…《日葡辞書》は〈人を招待などして,手あつく待遇する〉と釈している。 このように相手を招いて宴会を催し,酒食を供したうえで,引出物を贈るもてなしは,公家・武家を通じ,大饗埦飯(おうばん)などさまざまな形で行われ,饗応してもてなす側は,共食,贈与を通じて相手との人間関係を強めることを目的としていた。中世の荘園,公領では,現地に下向してくる預所,地頭,その代官,検注・内検・勧農・収納などの使に対し,三日厨(みつかくりや)をはじめとするもてなしをするのが荘官,百姓の義務であり,公事(くじ)とされていた。…

※「大饗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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