改訂新版 世界大百科事典 「絶翅類」の意味・わかりやすい解説
絶翅類 (ぜっしるい)
昆虫綱の中の一群で絶翅目Zorapteraを形成する。ジュズヒゲムシともいう。日本からは未発見のグループ。体長は1.5~3mmほどで,一見シロアリを小型にしたような印象を与える。1913年にポルトガルの昆虫学者シルベストリF. Silvestriにより,西アフリカ,セイロン,ジャワなどから得られたもので,初めて世界に紹介された。直翅系昆虫に属することは確かであるが,その正しい系統的位置については定かでない。
触角は数珠状で9節からなり,口器は典型的なかむ型である。前胸部はよく発達しており,肢は歩行肢で,跗節(ふせつ)は2節。後肢腿節はやや幅広い。尾角は1節で短い。無翅型が最初に知られたため絶翅類の名が出たが,のちに有翅型も発見された。無翅型のものには体の硬いものと軟らかいものとがあり,複眼も単眼もない。一方,有翅型では翅脈が退化した2対のきわめて弱い翅をもち,複眼,単眼が出現する。成熟してくると,有翅型の翅はシロアリのように基部の近くから切断され,脱落してしまい,翅根部を残すのみとなる。オーストラリア区を除く,世界の主として熱帯,亜熱帯に分布しており,1科1属27種が知られている。腐木や枯木の樹皮下に生息し,菌類の胞子,ダニ,小昆虫の死骸などを食べていると見られる。北アメリカのワシントン周辺では古い製材所あとに見られる鋸屑(きよせつ)の積もった中の木片などに多いという。数匹から100匹程度が群れをなして生活しているが,シロアリのような階級分化や社会生活の証拠は認められていない。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報