非定型精神病(読み)ひていけいせいしんびょう(英語表記)atypical psychosis

改訂新版 世界大百科事典 「非定型精神病」の意味・わかりやすい解説

非定型精神病 (ひていけいせいしんびょう)
atypical psychosis

統合失調症躁うつ病の病像特徴を有し,いずれとも診断しがたい精神病群を,とくに日本では非定型精神病とよぶことがある。経過が周期性,位相性で,ほとんど人格障害を残さずによくなるという点では躁うつ病に似ているが,精神症状は急性発症の統合失調症の病像を思わせるもので,ときにはなんらかの異常脳波所見を示す例もある。非定型精神病およびこれに類する精神障害については,これを独立した精神疾患であるとする満田久敏やレオンハルトK.Leonhardらの見方,統合失調症と躁うつ病の混合であるとするE.クレッチマーなどの立場,あるいは本来内因性精神病は類型論を基礎にした診断名であり,非定型なる概念そのものを認めない考え方などがある。変質精神病混合精神病といった病名は,ほぼ同様の障害群をさしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「非定型精神病」の意味・わかりやすい解説

非定型精神病
ひていけいせいしんびょう

機能(内因)精神病のうち、狭義の統合失調症(精神分裂病)とそううつ病は臨床上かならずしもその境界が明確であるとはいえない。両者が混合しているようにみえるが、そのいずれとも特定できない一群の精神病を一括して非定型精神病とよぶ。急性ないし亜急性に発症し、感情の起伏が激しく、幻覚、妄想を伴うが、比較的短期間に軽快し、予後は概して良好である。女性に多く、再発の傾向が強い。自生的にも発症するが心身面でのストレスが契機になることが多い。辺縁系をはじめ間脳・下垂体系の可逆性の機能異常や、てんかん性の脳波異常を示すものもある。標準診断基準DSM‐ⅣやICD‐10では、いくつか複数の診断名がこの非定型精神病と符合している。

 もっぱらドイツと日本で発展した疾病概念であり、疾病学的には統合失調症、そううつ病、てんかん(いずれも狭義)の三大定型精神病の各辺縁部に接触ないし重畳している独立精神病圏とする見解が有力であるが、異論もある。

[福田哲雄]

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家庭医学館 「非定型精神病」の解説

ひていけいせいしんびょう【非定型精神病】

 非定型精神病とは、統合失調症(「統合失調症」)と気分障害(「気分障害(躁うつ病)」)の両方の特徴が少しずつあるのですが、どちらともいえない病気です。なにかのきっかけがあって急に発病し、一時的に幻覚妄想(げんかくもうそう)などの精神変調をきたし、統合失調症のようにみえますが、その後は完全によくなり、気分障害のようにもみえるものです。
 完全によくなるのですが、くり返すことが多いとされています。精神変調は、幻覚妄想や錯乱(さくらん)などさまざまで、気分が高ぶったり、落ち込んだりすることもあります。物事に熱中しやすく、明るく社交的な人が、非定型精神病になりやすいタイプです。

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