一般には同系色の濃淡による色の「ぼかし」、または赤系、緑系、紫系など、それぞれの濃淡を組み合わせた階層をなす色調をいう。彩色法として絵画その他の美術工芸品に広く取り入れられているが、とくに染織品では、こうした色調の染物、織物を繧繝染め、繧繝錦(にしき)といっている。繧繝染めは濃淡に染め分けた縞(しま)状の文様で、絞りの技法によってつくられるものが多く、色と色の境目に染料のにじみによる微妙な色調が表れるのが特徴。
繧繝錦は中国盛唐のころより製織され始めた、新しいスタイルの錦文様で、中央アジアのトルファン・アスターナ出土の裂(きれ)類や、わが国の正倉院伝世の裂類のなかに、この種の作例が見受けられる。文様は階層をなす色の段に、菱(ひし)、花鳥、あるいは円形の小文様が織り出されたもので、地色の幅が一定して色の階調が穏やかなもの、地色の一つを強調して幅に大小をつけ、色調のコントラストを強く表出したものなどがある。平安時代以降、繧繝錦は独得の定形化した錦文様となり、宮中、神社、仏閣の畳縁(たたみべり)(繧繝縁)、その他の装飾として今日まで用いられてきている。
[小笠原小枝]
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