羊頭を懸けて狗肉を売る(読み)ようとうをかけてくにくをうる

精選版 日本国語大辞典 「羊頭を懸けて狗肉を売る」の意味・読み・例文・類語

ようとう【羊頭】 を=懸(か)け[=掲(かか)げ]て狗肉(くにく)を売(う)

  1. ( 「無門関」の「傍若無人、圧良為賊、懸羊頭狗肉」による語 ) 看板には羊の頭を掲げ、実際には犬の肉を売る。表面内容が一致しないこと、宣伝は立派でも内実がそれに伴わないことのたとえ。
    1. [初出の実例]「羊頭をかけて狗肉の宮芝居」(出典:雑俳・柳多留‐八八(1825))

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故事成語を知る辞典 「羊頭を懸けて狗肉を売る」の解説

羊頭を懸けて狗肉を売る

見せかけは立派でも、中身がそれに伴わないことのたとえ。

[使用例] こううものが出来ると、羊頭を掲げて狗肉を売るような作家や画家は、へいそくせざるを得なくなります[芥川龍之介*MENSURA ZOILI|1917]

[使用例] 立ち食いそのままの体でよくできている店というならば、何軒でもあるにはあるが、実際には“羊頭を掲げて狗肉を売る”たぐいが大部分である[北大路魯山人*握り寿司の名人|1953]

[由来] 「無門関―六」の一節から。昔、釈迦りょうぜん説法をしたとき、一輪の花を摘み取って何も言わずに人々に示しました。このとき、とまどう人々の中で、しょうという弟子だけはほほえんでいました。そこで、釈迦は彼にはわかると考えて、仏教奥義を授けたのでした。「無門関」では、この言い伝えを紹介しつつも、釈迦の態度を、「迦葉だけを相手にして、ほかの善良な人々をおとしめる、『羊頭を懸けて狗肉を売る(看板には羊の頭を出しておき、実際には犬の肉を売る)』ような中身のない説法だ」と批判しています。

[解説] ❶釈迦と迦葉のエピソードは、「ねんしょう」という四字熟語として知られているもの。仏教の教えはことばでは伝えることができない例として、有名です。それを批判する「無門関」の態度は、禅の書物にはよく見られる、批判を通じてこのエピソードの意味をより深く考えさせるための、一種の問題提起。本当に批判しているわけではありません。❷よく似た言い回しは中国では古くからあり、「晏子春秋―雑下」には「牛首を門に懸けて馬肉を内に売る」と、「さんけつろく注」には「牛頭を懸けてを売る」とあります。

〔異形〕羊頭狗肉

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