改訂新版 世界大百科事典 「耶蘇会士日本通信」の意味・わかりやすい解説
耶蘇会士日本通信 (やそかいしにほんつうしん)
1598年ポルトガルのエボラで出版された《日本シナ両国を旅行せる耶蘇会のパードレおよびイルマンなどがインドおよびヨーロッパの同会会員に贈った1549年より1580年に至る書簡》,いわゆる《カルタス・ド・ジャポンCartas do Japão》の日本訳の書名。耶蘇会(イエズス会)の耶蘇はJesusの近代中国音訳語〈耶蘇〉を音読みしたもの。村上直次郎による訳書は京畿編上下2巻(《異国叢書》所収),豊後編上下2巻(《続異国叢書》所収),下(しも)編1巻(《長崎叢書》所収)からなり,豊後編と下編を原文に即して再構成したものが《イエズス会士日本通信》2巻(《新異国叢書》所収)である。本書所収の諸書簡は日本におけるキリスト教の初期布教の実態と,戦国期日本社会の諸相を如実に伝えている。とくに畿内と九州の政治動向について詳述し,日本側史料の欠を補うものである。
→イエズス会日本年報
執筆者:五野井 隆史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報