日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャップマン」の意味・わかりやすい解説
チャップマン(Sydney Chapman)
ちゃっぷまん
Sydney Chapman
(1888―1970)
イギリスの物理学者、地球物理学者。ランカシャー州に生まれる。マンチェスター大学、ケンブリッジ大学に学び数学を専攻。1910年グリニジ観測所の助手となり地磁気の研究を始めた。マンチェスター大学、ロンドン大学の教授を歴任し、1946年オックスフォード大学の物理学教授となる。定年後は、主としてアメリカで研究活動を続けた。研究分野は広範にわたり、気体の運動学、地磁気、電離層、オーロラ、大気の潮汐(ちょうせき)現象などに関して優れた業績を残した。電離層中のいわゆるチャップマン層の研究で知られ、国際地球観測年(IGY)には国際委員会の委員長も務めた。主著に『地磁気』(1936)、カウリングThomas George Cowling(1906―1990)との共著『非均質気体の数学的理論』(1939)がある。
[吉井敏尅]
チャップマン(George Chapman)
ちゃっぷまん
George Chapman
(1559ころ―1634)
イギリスの詩人、劇作家。オックスフォード大学に学び、軍隊生活を経験ののち詩作を始め、晦渋(かいじゅう)な哲学詩『夜の影』(1594)を発表。かたわらホメロスの翻訳を手がける。『イリアス』は1611年、『オデュッセイア』は16年にそれぞれ出版され、訳文の華麗で力強い文体は、後の詩人たちに大きな影響を与える。劇作では、海軍大臣一座の座付作者として活躍し、『アレクサンドリアの盲乞食』(1596)、『取次ぎ役』(1602ころ)、『ムシュー・ドリーブ』(1604)など軽快なロマン的喜劇と、『後家の涙』(1608ころ)、ジョンソンおよびマーストンとの合作『東行き!』(1605)など風刺喜劇を書く。一方、当時のフランス宮廷の政事に材をとる二編二部連作悲劇『バイロン公チャールズの陰謀と悲劇』(1608)、および『ビュッシー・ダンボア』(1604)、『ビュッシー・ダンボアの復讐(ふくしゅう)』(1610)は、いずれも興行的に成功を収めるが、台詞(せりふ)は修辞的で登場人物の性格に厚みを欠き、ユマニストとしての作者の思想が生かされていないうらみが指摘される。
[笹山 隆]