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肝性脳症(肝性昏睡) かんせいのうしょうかんせいこんすい

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家庭医学館の解説

かんせいのうしょうかんせいこんすい【肝性脳症(肝性昏睡)】

アンモニアなどの物質が脳にたまる
 肝性脳症(Hepatic Encephalopathy)とは、肝硬変(かんこうへん)の進行した時期や劇症肝炎(げきしょうかんえん)などで肝不全(かんふぜん)となった際にみられる、意識障害などを中心とする精神神経症状をさします。後から振り返ってはじめて気づく程度の、落ちつかない、イライラする、ぼんやりする、夜に眠れず昼間に寝ている、などの軽い症状のⅠ度から、痛みの刺激にも反応せず、昏睡状態となり、重篤(じゅうとく)なⅤ度まで、5段階に分類されます。
 手を前方に伸ばしたときに、鳥が羽(は)ばたくように手が震える羽ばたき振戦(しんせん)と呼ばれる症状をみせるのが特徴的です。
 肝性脳症の発症のしくみとしては、アンモニア、低級脂肪酸メルカプタンやγ(ガンマ)‐アミノ酪酸(らくさん)(GABA)などの物質が肝臓で十分に解毒(げどく)されず、血液中に増加し、さらに脳内に移行するため、と考えられています。なかでもアンモニアはもっとも重要な因子とみられ、腸管内に存在する細菌のウレアーゼや小腸粘膜内(しょうちょうねんまくない)のグルタミナーゼという酵素(こうそ)による反応で生じるとされています。
 肝機能が低下するとアンモニア処理能も低下するため、血液中のアンモニアが増加します。また、肝硬変になると腸管からの血液が肝臓を通らず、肝臓に入っても肝細胞に触れずにバイパスを通ったりする(シャントと呼ばれる)ため、腸管からのアンモニアを十分に処理できず、全身にまわることになります。
 慢性肝不全による肝性脳症のときには、血液中のアミノ酸組成が変化して芳香族(ほうこうぞく)アミノ酸フェニルアラニンチロシン)が増加し、分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸(ロイシンイソロイシンバリン)が減少します。このとき分岐鎖アミノ酸を補充すると、精神神経症状が改善することが明らかになり、急性増悪期に点滴による静脈内投与や、慢性期に経口投与が行なわれるなど、臨床的にも応用されています。
 肝硬変時の肝性脳症では、その誘因としてたんぱく質の摂取過剰、消化管出血食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)や胃(い)・十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)からの出血)、便秘、水・電解質異常、向精神薬(こうせいしんやく)投与、感染症、外科的手術などがあげられます。
 したがって脳症のあるときには、たんぱく質の摂取を控える(40g/日)ことが勧められます。また、ラクツロースという二糖類の下剤(げざい)で腸管の有害細菌の増殖を抑え、アンモニアの吸収を抑制したり、吸収の悪い抗生物質の使用によりアンモニアを産生する細菌を殺菌したり、特殊アミノ酸製剤(分岐鎖アミノ酸)の使用などを行ないます。肝性脳症は、本人が自分では気づかない症状であるため、周囲の人の注意深い観察が必要です。

出典|小学館
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