家庭医学館 「胃の形態異常」の解説
いのけいたいいじょう【胃の形態異常】
比較的多いのは瀑状胃(ばくじょうい)で、それ以外の形態異常はまれです。
瀑状胃(ばくじょうい)
胃の上部が大きく拡張していて、頭を下げたような格好をしています。
胃の造影検査の際にバリウムを飲んで、立った姿勢でX線検査をすると、まず、胃の上部の拡張した部分にバリウムがたまり、つぎに、滝のようにバリウムが胃の中央部へと流れ落ちます。瀑布(ばくふ)のように胃の内容物が流れ落ちるので、この名称がついています。
生まれつきのものであれば、不都合がおこることはなく、治療の必要もありません。
成人肥厚性幽門狭窄症(せいじんひこうせいゆうもんきょうさくしょう)
胃の出口である幽門の筋肉(輪状筋(りんじょうきん))の一部が厚くなって(肥厚)、内腔(ないくう)が細くなるだけではなく、胃の内容物が通過する際にゆるむはずの輪状筋がゆるまないために、胃の内容物が十二指腸(じゅうにしちょう)のほうへ通りにくくなる原因不明の病気です。
●症状
上腹部の不快感や周期的な嘔吐(おうと)がみられることが多いのですが、無症状で、胃のX線検査の際に偶然、発見されることもあります。
●治療
症状があれば、輪状筋の緊張をゆるめるため、鎮痙薬(ちんけいやく)を使用します。
それでも症状が治まらなければ、手術をします。
胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)
胃がねじれ、内腔が閉ざされてしまう病気です。
胃の縦軸にそってねじれるのを臓器軸捻転症(ぞうきじくねんてんしょう)といい、子どもや高齢者にみられます。
胃の横軸にそってねじれるのを間膜軸捻転症(かんまくじくねんてんしょう)といい、青・壮年にみられます。
●症状
症状がないのがふつうですが、ボルヒャルトの3主徴といって、①嘔吐をともなわない吐(は)き気(け)、②胃のあたりに限られた痛み、③胃管(口か鼻から挿入し、胃へ飲食物を入れたり、胃の内容物を採取したりするための細い管)が胃の中に入らないという徴候がみられることもあります。
●治療
症状を抑える薬を使ってようすをみるのがふつうですが、症状が強ければ、手術をして、胃を整復固定します。
胃憩室(いけいしつ)
胃の一部が、外側にこぶのように張り出している形態異常です。中は空洞(くうどう)で、部屋のようになっています。ふだんは無症状で、成人後に、胃の造影検査や内視鏡検査の際、偶然、発見されることが多いものです。
憩室に炎症、潰瘍(かいよう)などがおこると、腹痛、吐き気・嘔吐などの症状が現われ、これを契機に発見されることもあります。
●治療
無症状であれば治療は必要としませんが、炎症、潰瘍などをくり返す場合は、憩室を切除します。
砂時計胃(すなどけいい)(二房胃(にぼうい))
胃の中央部がくびれている形態異常です。胃上部にたまった内容物が、砂時計の砂のように少しずつ、下部へと移動していきます。生まれつきのものであれば、たいていは治療の必要がありません。