胃幽門狭窄症(読み)いゆうもんきょうさくしょう(英語表記)Pyloric stenosis

六訂版 家庭医学大全科 「胃幽門狭窄症」の解説

胃幽門狭窄症
いゆうもんきょうさくしょう
Pyloric stenosis
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 幽門部という胃の出口が何らかの原因によって狭くなった(狭窄した)ために、胃内容物の十二指腸への移動が妨げられてしまうことで生じる病気です。

原因は何か

 原因としては、①胃自体の器質的疾患によるもの、②外部臓器の圧迫癒着によるもの、③胃運動機能の異常によるものに分けられます。

 胃の器質的疾患で頻度が多いのは、胃がん胃・十二指腸潰瘍に伴う狭窄です。また、頻度は少ないのですが、先天的に幽門輪(ゆうもんりん)という胃の出口の筋肉が肥大していて、新生児期に噴水状に嘔吐するという病態もあります。外部からの圧迫・癒着とは、胃周囲臓器である膵臓(すいぞう)大腸などに大きい腫瘍などができ、胃壁外から圧迫することで幽門部が狭窄する病態です。

 胃運動機能は、さまざまな原因で障害が起こります。神経症、ショック、薬物外傷、過度の飲酒などを原因として、胃自体の運動機能異常や幽門部の機能不全により、幽門部狭窄が生じます。

症状の現れ方

 症状としては、胃部不快感、膨満感、げっぷしゃっくりなどがあり、そうした苦痛が大量の嘔吐により改善します。嘔吐物やげっぷは強い酸臭、腐敗臭を伴います。

検査と診断

 胃運動障害による幽門狭窄一過性のことが多く、後述治療で早期(1~3日)に改善します。胃運動障害の原因となる状態の有無を患者本人やまわりの人から問診することで、おおよその予想がつきます。一方、器質的疾患を伴う嘔吐は、原疾患の治癒なくしては改善しないことが多く、原疾患の治療が最重要です。そのため、胃幽門狭窄症状が長びく際には、上部消化管内視鏡やガストログラフィンなど低張造影剤による造影検査を行い、胃病変の評価が必要です。

 粘膜面に病態がないものの狭窄部が存在する場合には、腹部CTなどにより、胃壁外の病気もしくは、巨大粘膜下腫瘍などの可能性について検査すべきです。

治療の方法

 まず、症状を安定させる治療が選択されます。嘔吐による脱水や電解質のバランスの乱れを補正するために輸液が重要で、また身体的・精神的安静も必要です。上部消化管内視鏡に先立って、胃管を挿入し胃内の洗浄を十分に行っておきます。胃に関するスクリーニング検査により、明らかな狭窄原因を認めた際には、治療は消化器専門医のもとで行うべきです。

病気に気づいたらどうする

 胃幽門狭窄症状を認めた際には、安静・食事調整(流動食などへの変更)により経過をみます。改善されない場合には、器質的疾患を疑って前記のスクリーニング検査を行います。原因となる疾患が認められたら、消化器専門医のもとで確定診断・治療を行うことが必要です。胃運動機能障害が長引くこともあり、その際は神経症・アルコールもしくは薬物依存自律神経系異常などの原因疾患を確定し、その治療を行うことが望まれます。

才川 義朗, 吉田 昌, 北島 政樹

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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