胡飲酒(読み)こんじゅ

精選版 日本国語大辞典 「胡飲酒」の意味・読み・例文・類語

こんじゅ【胡飲酒】

(「こおんじゅ」の変化した語) 雅楽曲名林邑楽(りんゆうがく)の一つ。壱越(いちこつ)調。古楽。一人舞。朱色の面に桴(ばち)型の具を持ち、酔人の態を舞う。こんず。こいんず。こいんじゅ。宴飲楽。酔胡楽
古今著聞集(1254)六「多忠方胡飲酒をつかうまつりけるに、此曲たびたび御覧ぜられつるに、今度ことにすぐれたるよし、おほやけわたくし沙汰ありけり」
[語誌](1)読みは、「楽家録‐二八・中華曲」によれば「古牟志由 酒字濁」とあるところから「こんじゅ」と読むべきかと思われるが、「雑秘別録」には「こいむず」とも見え、両様に読まれていたようである。
(2)この曲は唐楽に属するので、本来左方で舞われるべきものであるが、右方の多氏に伝えられた異例の曲である。

こいんず【胡飲酒】

※今鏡(1170)二「わらはまひ三人。こいんず。れう王。らくそんなん侍ける」

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デジタル大辞泉 「胡飲酒」の意味・読み・例文・類語

こんじゅ【胡飲酒】

雅楽の舞曲林邑楽りんゆうがく系の唐楽。壱越いちこつ調で古楽の小曲。一人舞。胡国の王が酒に酔ったさまを舞にしたという。酔胡楽。

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改訂新版 世界大百科事典 「胡飲酒」の意味・わかりやすい解説

胡飲酒 (こんじゅ)

雅楽,舞楽管絃の曲名。唐楽にふくまれ壱越(いちこつ)調。一人舞で走(はしり)舞。酔胡楽,宴飲楽ともいう。番舞(つがいまい)は《林歌》。面をつけ,桴(ばち)を持ち,《胡飲酒》用の別装束で舞う。胡国の王が酒を飲み,酔って舞った姿を舞にしたものという。演奏次第は《林邑乱声(りんゆうらんじよう)》(舞人登場,出手(ずるて))-《壱越調音取(ねとり)》(あるいは《迦陵頻音取》)-序(2帖,無拍節)-破(7帖,早四拍子)-破の重吹(しげぶき)(入手(いるて),退場)。序と破の部分が当曲舞。双調(そうぢよう)に〈破〉の渡物(わたしもの)が管絃曲としてある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胡飲酒」の意味・わかりやすい解説

胡飲酒
こんじゅ

雅楽の曲名。唐楽 (左方) 壱越 (いちこつ) 調に属する。仏哲という僧が伝えたといわれる林邑 (りんゆう) 楽の一つとする説もあるが明らかでない。舞人は頭に長い毛のある茶色の大型の面をつけ,太い桴 (ばち) を持ち,朱色の裲襠 (りょうとう) 装束を着け,1人で舞う。笛による前奏曲古楽乱声」を伴奏に登場し,「序」と「破」の2楽章を舞う。胡国の人の酒に酔った姿を模した舞といわれる。なお「破」の楽章は管弦 (器楽合奏) の曲としても演奏される。

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