モモ、リンゴ、クリ、ブドウなどの果樹類、モミ、トドマツ、カラマツ、ポプラなどの林木、クワなどの木本類に発生する病気。病原菌が木の幹に寄生し、病患部から上部が枯れ、いわゆる「胴枯れ」症状になるため、胴枯病とよばれる。病原は宿主の種類によって異なるが、いずれも子嚢(しのう)菌類、ディアポルテ菌科(胴枯病菌科ともいう)のディアポルテ、レウコストマ、クリフォネクトリア、バルサなどの属に属する菌である。ディアポルテ属ではDiaporthe tanakaeによるリンゴ胴枯病、D. conorumによるモミ、トドマツ、カラマツ胴枯病、D. nomuraiによるクワ胴枯病がある。レウコストマ属ではLeucostoma persooniiによるモモ、スモモ胴枯病がある。クリフォネクトリア属ではCryphonectria parasiticaの寄生によるクリ胴枯病が被害が大きく重要である。バルサ属ではValsa abietisによるヒノキ、サワラなどの胴枯病がある。なおバルサ属の寄生によっておこるリンゴその他種々の果樹類の胴枯れはとくに腐らん病といわれる。胴枯病菌は一般に腐生性が強いため、寒さなどによって樹勢が劣えたときに被害を受けやすい。一度寄生すると病原菌は四季を通じて樹上に残り、長い期間にわたり感染を繰り返すので防除が困難である。晩秋、木の地際(じぎわ)部から地上30センチメートルぐらいの高さまで石灰乳または石灰硫黄(いおう)合剤の原液を塗布して予防する。また発病した木では、病患部を削り取って、チオファネート・メチル塗布剤または有機銅塗布剤を塗布する。
[梶原敏宏]
樹皮に腐らん(爛)状の病斑を生じ,病状が進むとこれを生じた枝部あるいは全体が枯死する樹木の病気。子囊菌に属する数属の菌の寄生によって起こる。胴枯部を観察すると樹皮に小さな突起が見られる。これは分生子殻または子囊殻子座である。分生子殻のときは,内部に柄胞子が形成され,黄橙色の巻きひげのように外部に噴出する。これを胞子角と呼ぶ。個々の胞子は水滴に遭うと分散して新しい伝染源となり,傷口から侵入して病斑を作る。柄胞子は分生子殻内で越冬して翌年の伝染源となることもできる。小突起が子座のときには内部に子囊胞子が形成される。子囊胞子も柄胞子と同じように,枝や幹の傷口から侵入して新しい病斑を作る。子座は秋にできることもあり,また越冬した病斑部に春形成されることもある。胴枯病として著名なものには,リンゴ腐らん病,クリ胴枯病,クワ胴枯病などがある。リンゴ腐らん病は寒冷地のリンゴ栽培地で被害が大きいが,1975年ごろ約40年ぶりに大発生し,発生地も南下して問題となった。罹病部は少し盛り上がり,水気を含んでただれたようになる。クリ胴枯病は日本在来のクリはややかかりにくかったので昔はあまり重要でなかったが,1955年ごろから発生が多くなった。罹病樹では,秋に枯葉が枝に残ったままのものが多い。樹勢の弱ったときに発生しやすいので肥料を十分施し,冬凍害を受けないように保護すると防ぐことができる。
執筆者:寺中 理明
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