手紙などの書札様文書の宛名の左下に付ける語。宛名人に対して敬意を表すために用いる。書札は,古代・中世の公式様文書,下文様文書とは異なり,差出人から宛名人に対して礼を表すことを基本とした文書であるから,みずからを謙遜し,相手を尊敬する表現をとる。そのため,差出書はみずからの実名を署するのに対し,宛名書は決して相手の実名を書かず,家名,字名(あざな)に官位およびこれに準ずる称号を付して表す。さらに敬称として,殿,館,房,坊,局,禅室,方丈,所等の建物,居室を表す語を付ける。これらは,いずれも直接相手を名指しするのではなく,より間接的に呼ぶことによって,相手を敬う表現をしたものである。脇付は,このような間接的な宛名表記をさらに強める役割を果たすもので,人々御中,侍者,誰にても候へ,申給へ,御披露,御報,参等の語が添えられる。近代の侍史,机下,座下,床下,足下等も同様で,相手の周囲,配下のものから取り次ぐとか,その足元にそっと置きますとかの意味を込めたものである。
執筆者:富田 正弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…これに対し一般書状や書状形式の綸旨(りんじ),院宣,御教書(みぎようしよ)の類では,宛書は最末行に書かれる。宛書は個人あてのときは,直接その氏名を書かず,その人の官職や位階などで表現する場合もあり,差出人と受取人の身分の差に応じて,宛名の上に上所(あげどころ)といって進上,謹上などの文字を,また宛名の下に殿,様,館などの敬称を,宛名の脇に参(まいる),人々御中,侍史,机下などの脇付(わきづけ)を書くこともある。この上所から脇付までを総称したものが宛書である。…
…近世の武家では,通例,将軍,主君の安穏を慶賀する祝辞で始まることが多い。宛名には〈上所(あげどころ)〉といい,謹上,進上などの表敬の文字を上部に記し,下には殿,様,先生,兄などの〈敬語〉を楷,行,草にわたって書き分け,さらにその左右の下に〈脇付け〉として人々御中,侍者,侍史,参,まいる,机下などと記し,相手を直接指示しないで敬意を表する。また文中高貴の人物については行を変えたり(平出),その上を1,2字間空白(闕字(けつじ))とする。…
※「脇付」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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