六訂版 家庭医学大全科 の解説
脊椎・脊髄の病気〈総論〉
(運動器系の病気(外傷を含む))
ヒトの
脊柱は
頸椎は、頭を自由な方向へ向けるために各方向への可動域が最も大きい部分です。胸椎は肋骨と連結して胸郭を形成しており、可動性はほとんどありません。腰椎は5個の椎骨からなり、胸椎と骨盤の一部でもある仙骨を連結することで上半身を支持しており、最も大きな過重がかかるとともに大きな可動性をもつ部分です。仙骨は骨盤の中心で腰椎と両側の腸骨を連結する要石の役割を果たしています。
一方、隣り合う椎骨同士は、前方部分である椎体間に存在する円盤状の軟骨である
椎間板は、中心部の
また脊柱は、多くの
そして、このような構造で荷重に耐えつつなめらかな動きを可能とする脊柱は、まわりの
一方、脊椎は脊髄・馬尾神経といった重要な神経組織の通り道でもあります。神経組織の存在する空間は管状になっているため「脊柱管」と呼ばれます。これらの神経組織は極めて
そのため、体の中心にある骨組織のなかで厳重に保護されてるわけですが、いったん脊柱管自体が狭くなったり、脊柱管内部に靭帯の骨化や腫瘍などが発症すると、神経組織の逃げ場はなく、容易に圧迫されてしまう弱点を併せもっています。こうなると、脊椎とはかけ離れた部位である手足のしびれ・痛みや運動麻痺症状などがさまざまな程度で起こってきます。しかも肩こりや腰痛などの極めて一般的な症状が先行する場合が多いため、脊髄麻痺を来す重大な疾患の早期診断は必ずしも容易ではありません。
くわえて、脊椎の加齢変化が原因となる症状が最も多いという特徴があります。椎間板組織の老化現象は10代後半から始まるとされ、椎間板の機能低下に伴う椎間関節などの老化(医学的には変性といいます)は、同時に椎間板の脊柱管側への
久保紳一郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報