改訂新版 世界大百科事典 「腐敗選挙区」の意味・わかりやすい解説
腐敗選挙区 (ふはいせんきょく)
rotten borough
イギリスにおいて,1832年の選挙法改正以前に数多くみられた土地所有者や少数の貴族の意のままになる選挙区。近世以来,カウンティcountyとバラboroughの2種の選挙区に2議席ずつ与えられており,人口集中地区であった南部イングランドにはバラの大部分があった。しかし,産業革命の進行とともに人口はバーミンガム,マンチェスターなどの北部工業都市に集中するようになった。こうして,新興の大都市からは代表が議会にほとんど送り出されず,他方では,オールド・セーラムのようにわずか7名の有権者によって2名の議員が選出される選挙区が増加した。そこでは,賄賂や腐敗行為が公然と行われ,議席が売買の対象とされることもあった。しかしながら,腐敗選挙区の大半は貴族,富豪の手中にあり,彼らがパトロンとなり,自分の配下を議会に送り出したり,有望な青年を指名して議員として活躍させるためにこれらの議席は活用された。このような選挙区はポケット・バラpocket boroughとも呼ばれている。
→選挙法改正
執筆者:川人 貞史
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