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膵(臓)がん すいぞうがん Cancer of the Pancreas

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家庭医学館の解説

すいぞうがん【膵(臓)がん Cancer of the Pancreas】

自覚症状が出たときは手遅れ!
[どんな病気か]
◎腹痛持続と糖尿病の発病に注意
[症状]
◎検査は3段階に分けて行なわれる
[検査と診断]
◎手術が原則、生存率も向上
[治療]

[どんな病気か]
 膵(すい)がんは、腹部のがん、とくに消化器がんのなかでもっとも治療成績の悪いものの1つです。
 膵臓は胃の後ろに位置しており、膵がんが発生しても早い時期には症状がでにくく、自覚症状が出たときには病状が進み、すでに手遅れの状態であることがめずらしくありません。
 膵臓はなじみの少ない臓器ですが、膵がん患者の数は最近増加しています。厚労省の調査によると、膵がんの死亡率はがんのなかでは男性で第5位、女性で第6位となっており、年間約1万5000人もの人が亡くなっています(1996年「国民衛生の動向」より)。
 膵臓は消化液である膵液(すいえき)をつくる細胞(外分泌細胞(がいぶんぴつさいぼう))と、それが不足すると糖尿病になるインスリンをつくる細胞(内分泌細胞(ないぶんぴつさいぼう))との2種類の細胞からできています。
 膵がんというのは、膵臓にできる悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の総称ですが、通常は外分泌細胞系の膵管から発生した浸潤性(しんじゅんせい)(周囲の組織に広がりやすい性質)で悪性度の高いがんを指します。
 膵がんは、それが発生する場所によって、十二指腸(じゅうにしちょう)側の膵頭部(すいとうぶ)がんと、脾臓(ひぞう)側の膵尾部(すいびぶ)がんに分かれます。悪性腫瘍の特質として、発育を続けて周囲の臓器に浸潤し、場合によっては遠隔臓器に転移します。
 膵がんの治療成績向上のポイントは、早期がんのうちに見つけ、早めに治療してしまうことです。最近は診断技術の進歩によって、従来より早い時期の膵がんが見つかるようになり、治療成績も向上しています。

[症状]
 膵がんに特徴的な症状はないとされています。とくに早期では無症状のことも多く、せいぜい心窩部(しんかぶ)(みぞおち)の不快感、痛み、食欲不振など、腹部の不定愁訴(ふていしゅうそ)程度です。
 病気が進むと、膵頭部がんでは閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)(総胆管(そうたんかん)が閉塞されて胆汁(たんじゅう)が十二指腸へ排出されずにおこる黄疸)が、膵尾部がんでは背部痛がみられ、体重が減少します。
 膵がんになりやすい条件をもつグループを設定しようとする試みがいくつかなされましたが、まだ明確な因子は決まっていません。ただし、短期間で治らない腹痛などの腹部症状、糖尿病の急な発病などには注意が必要です。

[検査と診断]
 膵臓は、体内の存在位置からして、診断のための情報が得にくい臓器です。しかし、最近の画像診断技術の進歩によって、かなりのところまで診断できるようになってきました。
 膵がんが疑われた場合、まず血液検査と合わせて、侵襲(しんしゅう)(身体的負担)の少ない検査が行なわれます。通常は腹部超音波検査です。これは腹部エコー検査またはUS検査と呼ばれ、超音波を使って内臓の断面像を映しだし、腫瘍そのもの(直接所見)、あるいは腫瘍のために拡張した膵管(すいかん)(間接所見)を探します。
 つぎに行なうのが、胴体(どうたい)の断面像をみるCTやMRI検査です。どちらもトンネル状の装置に患者さんが入りますが、CTはX線が、MRIは磁気共鳴によるエネルギーが使用されます。この検査で疑わしい部分(腫瘍の有無や進展、膵管の拡張状況)を確認します。
 さらに正確にがんを確認するためには、内視鏡を十二指腸まで入れ、膵管を造影(ぞうえい)(薬品によって内部を映し出す方法)する内視鏡的逆行性膵管造影(ないしきょうてきぎゃっこうせいすいかんぞうえい)が行なわれます。また、足のつけ根の大腿動脈(だいたいどうみゃく)からカテーテルを入れて、膵臓の動脈や静脈の変化をみる血管造影検査もあります。どちらの造影検査も入院してから行なわれます。
 膵頭部がんで閉塞性黄疸がある場合は、黄疸を軽減する処置がまず行なわれます。これは、肝臓内の拡張した肝管にチューブを入れ、たまった胆汁を体外に排出する方法がとられます。
 血液の中に含まれる膵がんが出す物質(腫瘍(しゅよう)マーカーという)を測定できるようになりましたが、早期がんの場合は異常値を示すことが少ないため、最近では分子生物学的検査法をとりいれ、血液や膵液中にあるがん遺伝子の一種であるK‐rasの点突然変異(正常遺伝子ががん遺伝子に変化する過程で起こる変化のひとつ)を見つけ、膵がんの診断に役立てようとする試みもなされています。
 以上のように、膵がんが疑われる患者さんにはまず腹部超音波検査が行なわれ、直接所見や間接所見の有無を調べます。つぎにCTやMRI、内視鏡的逆行性膵管造影や超音波内視鏡、膵管内超音波内視鏡、血管造影などを実施し、正確ながんの場所と性質がつきとめられ、治療方針が決定されます。
 なお、膵がんは、胃がんや大腸がんのように内視鏡で病変部の組織をとって調べる検査(生検(せいけん))を行なって術前に病理診断を下すことができません。超音波検査装置によって体内をモニターしながら、体外から生検針を膵がんに誘導して組織を採取することは可能ですが、がんを広げる危険性があるため、一般的な方法にはなっていません。

[治療]
 膵がんの治療成績は、他の消化器がんと比べると必ずしもよいとはいえません。それでも手術が今のところ最良の方法で、病変部を切除する以外に長期生存は望めません。
 膵がんの手術は、単に病変を切除するだけではなく、周囲のリンパ節、神経、結合組織を含めて大きく切除しなければなりません。
 進行した膵がんで近くの血管に浸潤がある場合は、肝臓への転移や腹膜への播種(はしゅ)(種をばらまいたような転移)がなければ、それらの血管を合併切除することもあります。
 膵頭部(すいとうぶ)がんには膵頭十二指腸切除術が行なわれるのがふつうです。切除範囲が広く再建も複雑で、腹部外科ではもっとも大がかりな手術の1つです。
 最近では、胃を切除せず全部残して行なう、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(ゆうもんりんおんぞんすいとうじゅうにしちょうせつじょじゅつ)も施行され、術後のQOL(生命・生活の質)を少しでも高めるよう工夫されています。また、病変が広く尾側にまでおよんでいる場合には膵全摘術(すいぜんてきじゅつ)も行なわれます。なお、膵全摘術が行なわれた場合は、終生インスリン注射が必要となります。
 膵体尾部がんには、尾側を切除する膵体尾部切除術が行なわれます。手術を行なうと血液が行かなくなるので、膵尾部に続く脾臓も切除されますが、その影響は一般にないとされています。
 手術後に再び同じ病変がおこることを再発といいますが、膵がんの再発で多いのは、局所再発と肝転移です。
 局所再発とは、病変部を切除したすぐ近くに再びがんができることで、手術で病変部を完全に取り切れなかったことを意味します。広く切除した場合でも局所再発はしばしばおこります。ここに膵がん治療の難しさがあります。
 そこで、膵がんに対しては、手術にとどまらず、放射線療法や抗がん剤を併用した集学的(しゅうがくてき)治療が行なわれるようになってきています。医療機関によって方法はさまざまですが、放射線療法では、術中照射や術後体外照射が行なわれ、抗がん剤も、肝転移に対しては動脈や静脈経由で直接患部に届くように使用されます。
 手術で腹部を開いてみても、膵がんが非常に進行していて、不幸にも切除できなかった場合には、つぎのようなバイパス手術が行なわれます。
 黄疸があるときには胆管と腸が、食物の通過障害があるときには胃と腸が吻合(ふんごう)(管腔をつなぎ合わせる)され、残された生存期間におけるQOLの向上がはかられます。
 膵がんの治療に力を入れている施設では、その切除率は約40~60%に達します。
 また、手術死亡率(手術をして1か月以内に死亡する割合)はほとんど0%で、在院死亡率(術後、一度も退院することなく死亡する割合)も5%以下となっています。
 手術をした場合の成績は、50%生存期間(手術した人のうち、半数の人が生きている期間)は約12か月、5年生存率は約15%になっています。

出典|小学館
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それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

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