臍帯ヘルニア(読み)さいたいヘルニア(その他表記)Omphalocele

六訂版 家庭医学大全科 「臍帯ヘルニア」の解説

臍帯ヘルニア
さいたいヘルニア
Omphalocele
(子どもの病気)

どんな病気か

 臍帯内に腹腔内(ふくくうない)臓器(主に腸管肝臓)が突出したもので、出生1万人に1人前後の頻度で発生します。脱出臓器は羊膜(ようまく)臍帯膠質(さいたいこうしつ)、腹膜の3層からなる薄い膜におおわれています。50%以上の症例染色体異常、消化管、心血管、泌尿生殖器、中枢神経系などの重症奇形を合併しています。

原因は何か

 胎生3~4週の腹壁(ふくへき)形成障害(腹壁形成不全説)と、胎生8週ころの中腸の腹腔内への還納(かんのう)障害(腸管(ちょうかん)腹腔内還納不全説)の2つの説があります。肝臓の脱出を伴うような大きな臍帯ヘルニアでは前者の説が、小さな臍帯ヘルニアでは後者の説が有力とされています。

症状の現れ方

 出生前に診断される場合が多く、出生後でも臍帯内に脱出腸管が認められるため診断は容易です。臍帯が極端に太いために異常に気づかれ、小さな臍帯ヘルニアが見つかることもあります。

検査と診断

 在胎20週ころに胎児エコー(超音波)により診断(出生前診断)される場合が多くなっています。臍帯の膜が破れたものを破裂臍帯ヘルニアと呼びますが、先天性腹壁破裂との見極めが必要になります。他の合併奇形の検索も大切です。

治療の方法

 分娩方法による予後への影響はないといわれていますが、小児科と小児外科がすぐに対応できる体制を整えておく必要があります。術前には低体温、脱水、感染に対する治療が必要で、搬送に際してはヘルニア(のう)と脱出腸管に滅菌(めっきん)ガーゼをかぶせて、さらにプラスチックラップでおおいます。胃管を挿入し腸管の減圧を行うことも必要です。

 手術は一期的な閉鎖術が理想ですが、ヘルニア門が大きかったり、腹腔内容積が小さい場合には多段階手術(人工被膜を使用したSchuster法やAllen-Wrenn法など)が必要になります。

 術後には脱出臓器の腹腔内還納に伴う腹圧上昇、下大(かだい)静脈肝静脈の循環障害、横隔膜(おうかくまく)挙上による呼吸抑制などが問題になります。

病気に気づいたらどうする

 出生前診断で疑われた場合は、新生児外科治療の可能な施設での分娩が望まれます。出生後に診断された場合は、同様の施設への緊急搬送が必要です。

和田 雅樹

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

百科事典マイペディア 「臍帯ヘルニア」の意味・わかりやすい解説

臍帯ヘルニア【さいたいヘルニア】

臍ヘルニア一種臍輪,臍帯の先天性異常で,原因は妊娠初期に腹壁の閉鎖が完全に行われなかったため。脱出する臓器は主として腸だが,胃,肝臓,腎臓など腹部内臓のほとんどが脱出する場合もある。重症のものは心臓の形態異常,腹壁の形態不全などを合併していることもあり,生後まもなく死亡する。小さいものは,圧迫して中に入れ絆創膏(ばんそうこう)で固定しておくと治ることもあるが,ヘルニア門(臍輪)の大きいもの,圧迫して中に入れることが困難なものは手術が必要。

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家庭医学館 「臍帯ヘルニア」の解説

さいたいへるにあ【臍帯ヘルニア】

 生まれつき腹壁(ふくへき)が不完全なため、臍(へそ)の緒(お)(臍帯(さいたい))の中に内臓が脱出する先天異常です。臍の皮膚が欠損(けっそん)しているため、臍帯の半透明な膜の下に腸や肝臓(かんぞう)が透けて見えます。
 治療は、腸だけ出ている小さなヘルニアでは、臍帯を切除して腹壁を閉じます。
 肝臓が出ているような大きなヘルニアでは、臍帯を医療用の布で一時的におおい、10日ほどかけて布を少しずつ縫い縮めて内臓を腹腔(ふくくう)に押し戻し、腹壁を閉じます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「臍帯ヘルニア」の意味・わかりやすい解説

臍帯ヘルニア
さいたいヘルニア
omphalocele

胎児の腸管は胎生7週頃には臍帯の中に存在しているが,10週頃になると腹腔内に収まる。この機転に異変が生じて,新生児の腸管が薄い被膜におおわれて体腔外に脱出している状態をいう。早期に手術しなければ,感染や破裂などを起して死亡するが,高度の臍帯ヘルニアの場合には他の奇形を合併していたり,手術できないことが多く,予後は悪い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の臍帯ヘルニアの言及

【ヘルニア】より

…臍(さい)ヘルニアumbilical herniaは,弱い部分であるへそに腸がとび出す,いわゆる〈出べそ〉で,乳幼児に多くみられる。生まれつきの大きな臍帯の中に内臓が脱出するのは臍帯ヘルニアomphalocele herniaで,皮膚が欠損しているため外から内臓を見ることができる特異なヘルニアである。へその上の腹壁正中線上の弱い部分には上腹壁ヘルニアepigastric herniaができる。…

※「臍帯ヘルニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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