六訂版 家庭医学大全科 「自律神経障害」の解説
自律神経障害
じりつしんけいしょうがい
Dysautonomia
(代謝異常で起こる病気)
症状の現れ方
心臓や血圧や胃腸は自分の意思の力では調節できず、自律神経によって調節されています。自律神経は、運動や緊張時に脈拍数を増やしたり、起立時に脳への血流を保ったり、食事内容に応じて胃腸も調節しています。
高血糖によって自律神経が障害されると、脈拍数が固定化したり、
また、経口血糖降下薬やインスリンで低血糖が起きた場合に、典型的な低血糖症状が現れなくなる低血糖無自覚も、自律神経障害による障害です。
治療と対策
自律神経障害そのものの治療は、末梢神経障害と同様に血糖コントロールが第一です。しかし、徐々に進行した自律神経障害そのものを急速に改善することは一般に困難です。そのため、自律神経障害による二次的な事故を防ぐことが重要な治療目標になります。
狭心症の症状が典型的でなくなる無痛性心筋
自律神経障害が進んでいるような糖尿病の患者さんは、高血圧となっていることが多いので、起立性低血圧だからといって血圧を上げる薬剤は通常用いません。
排尿障害で膀胱が拡大する神経因性膀胱が疑われれば、泌尿器科の診察を受ける必要があります。神経因性膀胱があると尿路感染症の危険が増すので、定期的排尿やカテーテルを用いた治療を行う場合があります。勃起障害は、障害の程度を把握してシルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビトラ)、タダラフィル(シアリス)を試みます。
低血糖無自覚の疑いがあれば、血糖の測定回数を増やしてインスリンの投与方法を細かく合わせたり、血糖コントロール目標を高めにする場合があります。低血糖がまったく自覚できない場合は、自動車事故の危険が高くなるので、運転は許可できません。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報