臭素酸(読み)しゅうそさん(英語表記)bromic acid

精選版 日本国語大辞典 「臭素酸」の意味・読み・例文・類語

しゅうそ‐さん シウソ‥【臭素酸】

〘名〙 化学式 HBrO3 水溶液としてだけ存在する。無色。酸としては臭化水素酸臭化水素の水溶液)より弱いが沃素酸よりは強い。分解すると酸素臭素を出す。

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改訂新版 世界大百科事典 「臭素酸」の意味・わかりやすい解説

臭素酸 (しゅうそさん)
bromic acid

化学式HBrO3。水溶液としてのみ存在する。低温で減圧により約50%(重量)まで濃縮できるが(溶液の組成はHBrO3・7H2Oにほぼ相当する),さらに濃縮しようとすると臭素と酸素とに分解する。1気圧での分解温度は100℃。

 4HBrO3─→2H2O+2Br2+5O2

臭素水に塩素Cl2を作用させ,生じた塩化水素HClを酸化銀(Ⅰ)で除いてつくる。

 Br2+6H2O+5Cl2─→2HBrO3+10HCl

臭素酸バリウムBa(BrO32に計算量の硫酸を作用させても得られる。また硫酸銀Ag2SO4懸濁液に臭素水を加えると臭素酸と硫酸の混合溶液として得られる。

 Ba(BrO32+H2SO4─→2HBrO3+BaSO4

 5Ag2SO4+6Br2+6H2O─→2HBrO3+5H2SO4+10AgBr

水溶液は無色で,濃厚な溶液はやや粘稠(ねんちゆう)である。酸性は臭化水素酸よりは弱いがヨウ素酸よりは強い。酸化性が強く,硫黄と反応して二臭化二硫黄S2Br2を生じ,硫化水素亜硫酸を硫酸にまで酸化する。また亜硝酸は酸化されて硝酸となる。塩酸と反応し塩化臭素BrClと塩素を生じ,臭化水素HBrとではBr2が得られる。ヨウ化水素酸では臭化水素とヨウ素とになるが,この反応は臭素酸の定量に用いられる。過酸化水素とは反応して酸素を生ずる。臭化ナトリウムなどの無機臭化物の製造に用いられる。

 臭素酸塩bromateは一般式MBrO3で表される。一般に無色の結晶,多くは水に溶けにくく,塩素酸塩よりも溶解度は小さい。熱すると臭化物と酸素,あるいは酸化物と臭素と酸素に分解する。強い酸化剤となる。たとえば臭素酸カリウムKBrO3は無色三方晶,比重3.27(17.5℃),370℃で分解。臭素酸ナトリウムNaBrO3は無色立方晶,比重3.34,381℃で分解。臭素酸バリウムBa(BrO32・H2Oは無色単斜晶,比重3.99(18℃),170℃で無水和物となる。
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化学辞典 第2版 「臭素酸」の解説

臭素酸
シュウソサン
bromic acid

臭素のオキソ酸には,モノオキソ臭素(Ⅰ)酸HBrO(通称:次亜臭素酸(hypobromous acid)),ジオキソ臭素(Ⅲ)酸HBrO2(通称:亜臭素酸(bromous acid)),トリオキソ臭素(Ⅴ)酸HBrO3(通称:臭素酸),テトラオキソ臭素(Ⅶ)酸HBrO4(通称:過臭素酸(perbromic acid))があるが,いずれも水溶液としてのみ存在する.このなかで,単に臭素酸という場合にはHBr O3をさす.HBrO3(128.91)は,臭素酸バリウムBa(BrO3)2と硫酸との反応濾液から得られる.低温で減圧蒸発濃縮すると,約50% 程度の粘性のある水溶液が得られる.純粋なものは無色であるが,室温に放置すると,一部分解して淡黄色を帯びるので,低温で保存する.40 ℃ 以上に加熱すると分解し,Br2 と O2 を生じる.強酸性である.強い酸化剤で,H2SやSO2をH2SO4に,H2O2を O2 に,HCl,HBr,HIをそれぞれ Cl2,Br2,I2 に酸化する.HIの酸化反応は定量的に進行するので,臭素酸の定量分析に利用される.染料の合成反応の中間処理で酸化剤として用いられる.皮膚や粘膜をおかす.有毒.[CAS 7789-31-3]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「臭素酸」の意味・わかりやすい解説

臭素酸
しゅうそさん
bromic acid

化学式 HBrO3 。水溶液中にだけ安定に存在する。水溶液は無色であるが,室温に放置しておくと黄色に変る。-12℃,真空中で注意して蒸発させると約 50%水溶液が得られる。 100℃に熱すると分解する。臭素酸バリウムに硫酸を加えて製造することができる。酸化剤として使用。皮膚,眼,粘膜をおかす。

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