舞踊に使う扇で、日本舞踊では代表的な持ち道具。平安時代の笏(しゃく)から変化した木製の檜扇(ひおうぎ)が五節舞(ごせちのまい)に用いられ、中世には竹骨に紙を張った中啓(ちゅうけい)や常の扇(つねのおうぎ)となった。能では中啓を用い、直面(ひためん)、素襖裃(すおうかみしも)の男と素謡(すうたい)や仕舞には普通の形の常の扇(鎮(しずめ)扇)を使用。狂言ではおもに常の扇を使う。歌舞伎(かぶき)舞踊では、能に取材した三番叟(さんばそう)物の翁(おきな)、千歳(せんざい)、三番叟や、『娘道成寺』『汐汲(しおくみ)』『浅妻船(あさづまぶね)』『文屋(ぶんや)』などに中啓を、ほかの多くに舞扇を使用する。大きさは普通九寸五分(約30センチメートル)で、絵模様は通常役柄や作品にふさわしいものを使う。上方(かみがた)舞に小ぶりなものもある。また、鎌倉時代の六骨(ろっこつ)、姫や腰元の女扇、武将の軍扇(ぐんせん)、世話物の日常の扇なども種々用いられる。
[如月青子]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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