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衛星航法 えいせいこうほう

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大辞林 第三版の解説

えいせいこうほう【衛星航法】

双曲線航法のうち、人工衛星を発信局に用いるもの。

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

衛星航法
えいせいこうほう

航行衛星により、水上艦船や航空機の位置を測定する航法。アメリカ海軍のために開発されたトランシット衛星による海軍航行衛星システムNNSS Navy Navigation Satellite System)に全面的に依存している。[川本文彦]

航行衛星の開発

1957年10月4日、人類最初の人工衛星スプートニク1号がソ連によって打ち上げられ、ピーポ、ピーポという発信音を出しながら地球の周りを回り、世界の人々を驚かせた。この発信電波を受信して、衛星の移動から生ずるドップラー効果による受信周波数の変化から衛星軌道を求めることに成功したのは、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学の研究陣であった。彼らは逆に、軌道のわかっている人工衛星から発射される電波の周波数の変化を測定すれば、受信点の位置がわかるはずであると考えた。
 この考えによる航行衛星の研究、開発を、アメリカ海軍から委託されたジョンズ・ホプキンズ大学では、1959年以来、一連のトランシット衛星打上げによる基礎実験ののち、63年に運用型の衛星打上げに成功し、64年以降、アメリカ海軍艦船の位置測定方式として用いられるようになった。その後67年、衛星の発する多くの情報のうち位置測定に必要な約6分の1と、安価な水上艦船用のAN/SRN9型受信装置の技術が民間にも公開されて、世界中で用いられるようになった。[川本文彦]

衛星軌道の6要素

人工衛星は月と同じく地球の衛星である。衛星の軌道と運動については、太陽と惑星、地球と月などの間に適用されるケプラーの法則に従い、その理論はニュートンによって力学的に裏づけられている。
 図Aの楕円(だえん)軌道の形や、大きさを知るには、(1)長半径と(2)短半径または離心率を知ればよい。任意時の軌道上の衛星位置を求めるには衛星の(3)近地点通過時刻を知ればよい。さらに、楕円軌道と地球との関係は、(4)昇交点赤経、(5)軌道傾角および(6)昇交点の近地点離角がわかれば決まるので、以上の6要素により地球に対する任意時刻の衛星位置が決定できる。[川本文彦]

NNSSの機構

4~6個の衛星と、その衛星を支援するいくつかの地上局、および艦船に積まれた受信装置からなる。地上局は、ドップラー追跡を行って衛星軌道を監視する四つの追跡局(メーン、ミネソタ、ハワイ、カリフォルニア)、全追跡局から各衛星のデータを集め、以後16時間の未来軌道要素および時刻修正を計算する計算センター(カリフォルニア追跡局に併置)、および衛星がその局の上空を通過するときに、新しい軌道要素を送信して衛星内にある記憶回路の中味を入れ替える軌道情報送信局(ミネソタ、カリフォルニア追跡局に併置)からなっている。さらに、ワシントンにある海軍天文台が衛星から送信される時間信号の精度を監視している(図B)。
 衛星は、地球の中心から約7450キロメートル離れた円に近い楕円形の極軌道(衛星が地球の北極と南極の上を通る軌道)を106~107分の周期で回りながら、399.968メガヘルツと149.988メガヘルツの安定した二つの周波数を送信し、その電波にのせて2分ごとの時間信号と、そのときの衛星位置が計算できる軌道要素を送信している。
 船の受信装置は、受信空中線、受信機本体、電子計算機、および電子計算機に所要のデータを入力し計算された測位結果を表示するための入出力装置で構成されている。[川本文彦]

測位原理

同じ衛星でも、航行衛星は月に比べて地心からの距離が非常に近く、運行速度がきわめて速いので、天文航法のように高度や方位を測定することが困難である。そこで万能周波数計による2分間の受信周波数測定を介して、2分ごとの衛星位置から船までの距離差が次の式によって測定される。

Nは2分(120秒)間の受信カウント数、fは送信周波数、λは波長である。
 衛星軌道上の2分ごとの位置が決まり、それぞれの位置からの距離差がわかれば、空間に双曲面が決定され、この双曲面が地球と交わる曲線が求められる。これが衛星航法による位置の線で、このような位置の線の交点として位置が決定される(図C)。[川本文彦]

利用範囲と利用回数

地上の高さ約1000キロメートルの衛星を最小仰角5度まで測定できるとすると、衛星直下点を中心に地心角半径約25度まで利用できる。したがって、一つの衛星が水平線から上り、水平線に没するまでの時間は最大約14分で、この間に6~7回の測定が可能である。
 また、地球は西から東へ24時間で1自転しているので、衛星が慣性空間に対して極軌道を106~107分の周期で1周する間に地球は26.5度自転し、衛星軌道は26.5度ずつ西方へ移動する。衛星が北上するときも南下するときも観測できるので、衛星1個の利用回数は、赤道上のある地点で1日に4回弱、中緯度地方では約5回である。
 6個の衛星の利用回数は赤道上で約24回、中緯度地方で約30回と計算されるが、測位精度の点から、仰角15度以上75度以下で通過する場合を有効利用回数とすると、約半数となり、平均待ち時間は赤道付近で約2時間、中緯度地方で約1時間半となる。[川本文彦]

測位精度と特徴

NNSSによる測位誤差の原因として、
(1)衛星および受信機内の発信周波数の安定度
(2)電離層通過時の電波の屈折(この補正のために2周波数が用いられている)
(3)軌道予測の誤差
(4)観測中の針路、速力の誤差
(5)ジオイド面上の空中線の高さの誤差
が考えられ、極軌道をとる関係から、南北方向の誤差よりも東西方向の誤差のほうが大きいが、海上での使用実績によると、60%が誤差0.5海里(926メートル)以内に収まるといわれる。
 全世界的な位置測定方式で、精度も高く、受信機は完全自動化されていて、測定位置は緯度、経度で表示される利点があるが、衛星が船の上を通過するときしか利用できないこと、コンピュータが必要なので受信装置が高価なこと、および運用が完全にアメリカ海軍に握られている点に問題がある。
 アメリカ海・空軍では、次の航行衛星としてNAVSTAR(ナブスター)‐GPS(Global Positioning System)の開発を進めている。[川本文彦]

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