日本大百科全書(ニッポニカ) 「航研機」の意味・わかりやすい解説
航研機
こうけんき
1937年(昭和12)東京帝国大学航空研究所が約6年間を費やして設計した長距離飛行記録用機。設計は同所の機体部と発動機部とがあたり、機体製作は東京瓦斯(ガス)電気工業社が担当した。1937年3月31日に完成。5月25日初飛行を行い、その後テストや改修を加えて1938年5月13日から15日にかけて、木更津―太田―平塚の3地点を結ぶ周回飛行で1万1651.01キロメートルの公認世界記録と、1万キロメートルでの平均速度記録186.192キロメートル/時の国際公認記録を樹立した。これは日本の航空史上ただ一つの世界記録であるが、1年2か月後に破られている。操縦には藤田雄蔵(1898―1939)陸軍大尉ほか2名があたった。翼幅28メートル、全長15メートル、翼面積87.3平方メートル、最大重量9トン、乗員2~3名、最大水平速度240キロメートル/時。なお、航空研究所では、この後A26という長距離機を設計し、1944年7月に当時の満州国(現、中国東北部)の新京(現、長春)―白城子(はくじょうし)―ハルビンを結ぶ三角コースで1万6455キロメートルの周回飛行記録をつくったが、第二次世界大戦中のため公認されていない。
[落合一夫]
『富塚清著『航研機 世界記録樹立への軌跡』(1998・三樹書房)』