船に装飾を施すことで、その装飾には、船体に直接彫刻や塗装を施す直接装飾と、船を旗や幟(のぼり)、幕などの装具で飾る間接装飾とがある。歴史的にみると、国内各地で出土する縄文・弥生(やよい)時代の丸木舟の類には装飾的工作の跡はみられないが、舟の櫂(かい)には精巧な彫刻が施されているものがあり、船や船具に対する装飾工作は古くから存在したことが知られる。また『万葉集』には「あけのそほ舟」とか「さに(丹)塗りの舟」というような表現がみえ、古代における舟への意識的塗装がうかがえる。船に対する装飾がきわめて発達するのは平安時代で、とくに宮廷貴族が儀式用あるいは遊びのために用いた船には流麗な装飾をみる。その代表は、船首に竜頭鷁首(りゅうとうげきしゅ)といわれる竜頭ないし鷁首の彫刻をつけ、船体全体を美しい金具や装具で覆った船で、これと同型の船は、今日、和歌山県新宮(しんぐう)市熊野速玉(はやたま)大社の御船(みふね)祭などに使用されている。また平安時代には檜皮葺(ひわだぶ)きの屋形船なども登場している。中世から近世にかけての時期は海上交通の発展に伴い商船や軍船が膨大な数となるが、この商船や軍船では一部に、船首にさがりや装飾金具をつけたり、また船体の要所に補強と装飾を兼ねたものを装備する船が現れた。なかには藩主の家紋を染め抜いた幕や旗、幟、吹抜けなどで豪華に飾りたてた軍船もあり、とくに徳川家光(いえみつ)の御座船であった安宅(あたけ)丸(1634年完成、35年試乗)などはその船飾りで有名である。
ところで、一般漁民の漁船に船飾りを施す伝統はそれほど古くからのものではない。漁船の装飾を代表するのは全国的な大漁旗や一部地域にみる船体塗装などであろうが、前者は、各地で大漁のおりや、船おろし・間直(まんなお)しなどの儀礼で用いられ、後者は、沖縄をはじめおもに西日本で大漁や海上安全を願って実施される舟競漕(きょうそう)に用いる手漕(てこ)ぎ舟に対して行われる。つまり、漁船の船飾りは、祝いや宗教・儀礼的な機会に限定して行われる。
[野口武徳]
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