デジタル大辞泉 「苟も」の意味・読み・例文・類語 いやしく‐も【×苟も】 [副]《形容詞「いやし」の連用形+係助詞「も」から》1 仮にも。かりそめにも。「苟も人の上に立つ者のすべきことではない」2 もしも。万一。「苟もこれが事実なら、早急に対処すべきだ」3 (あとに打消しの語を伴って)いいかげんに。おろそかに。「一字一句を苟もせず」「畢生の事業として研究する積りでいるのだから、―筆を著けたくない」〈鴎外・かのやうに〉4 不相応にも。柄にもなく。「―勅命をふくんで、しきりに征罰を企つ」〈平家・七〉5 まことに。「さうしたお心を聞いてから、―いやましに思ひがこうなりました」〈浮・歌三味線・一〉[類語]仮にも・かりそめにも 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例 Sponserd by
精選版 日本国語大辞典 「苟も」の意味・読み・例文・類語 いやしく‐も【苟も】 〘 副詞 〙 ( 形容詞「いやしい」の連用形に助詞「も」の付いたもの )① かりにも。かりそめにも。いやしゅうも。[初出の実例]「豈(あに)苟(イヤシクモ)時の誉れを要すること得むや」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八)② 表面では卑下して、ほんとうは自負心をもっている気持を表わす。不相応にも。柄でもないのに。いやしゅうも。[初出の実例]「為義いやしくも弓矢の家にむまれて、父祖累葉の跡をつぎ、朝家の御固とし、めしつかはるといへども」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)上)③ まことに。[初出の実例]「苟(イヤシクモ)言ふ所、理に合へしめつれば、尚を天仙の帰敬を得たり」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八)④ もしも。万一。[初出の実例]「苟も人の天性を妨ることなくば、其事は日に忙はしくして其需用は月に繁多ならざるを得ず」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一)⑤ ( 後に打消の語を伴って ) いいかげんにも。おろそかにも。[初出の実例]「卒業論文には、国史は自分が畢生の事業として研究する積りでゐるのだから、苟くも筆を著(つ)けたくないと云って、古代印度史の中から、題を選んだ」(出典:かのやうに(1912)〈森鴎外〉)苟もの語誌( 1 )「いやし」は、卑賤すなわち価値水準が低劣であるということから、地位、身分、財産、品性などの一般的条件を充足する段階に到達しない、不備があることをも表現する。( 2 )相応する条件をみたさないが、ちょっと、かりそめにという意味で「苟」を「いやしくも」と訓読した。ところが、漢語の「苟」には、「かりそめに」のほか、「まことに」「ただ」「もし」「あるいは」などの意味があるので、「いやしくも」の意味も多様性をもつこととなった。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例 Sponserd by