中国の旧式喫茶店,日本の茶店(ちやみせ)にあたる。時代や地方や規模によって,茶園,茶社,茶室,茶肆,茶居,茶坊,茶寮,茶楼(2階建て)などの別称があり,さらに卓子(テーブル),椅子(いす)を備えた客席を茶卓,茶座とも称した。その地域の繁華な場所,近代では公園内などに設けられ,住民または行楽客に茶を提供する休憩所とした。屋内または屋外に卓と椅子(または籐椅子)を置き,卓上にはスイカ,カボチャ,ヒマワリなどの種やナツメ,アンズなどの蜜煮の小皿を並べ,お茶うけとして用意する。茶の葉は茶館に注文してもよく,あらかじめ市成の茶葉鋪から少量を買ってきてもよい。給仕が茶壺にいれてポットの湯を注いでくれる。勘定は席料と茶菓代とを併せて支払う。茶館では原則として酒食は出さず,客は茶をすすりながら休息し,歓談するだけであるから,それは地域の慰安集会所であり情報交換所でもあった。新しい小説や戯曲でも,こうした郷村の茶館を舞台とするものが少なくない。
執筆者:沢田 瑞穂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国の喫茶店で、茶を飲み点心などを食べる店。「さかん」とも読み、茶楼、茶肆(ちゃし)、茶居、茶寮ともいう。芸人を招き演芸させるなど、庶民的な娯楽の場、また交際、情報交換の場ともなった。日本では、1888年(明治21)東京・下谷(したや)黒門町で開店した「可否茶館(カッヒーちゃかん)」が近代的喫茶店の初めとして現れた。経営者は中国人であったが、建物は洋風の構えで、室内には玉突き台、トランプ、図書、便箋(びんせん)・封筒などが備えられ、庶民の気楽な交際の場として評判になった。西洋化の進む都市において、喫茶店は近代主義の象徴的存在であったといえよう。なお、中国現代劇に茶館を舞台とした戯曲『茶館』(老舎作)がある。
[佐々木日嘉里]
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