手紙を書くための紙。手紙を書く目的に限定した用紙がつくられたのはいつか明らかでないが,つづり合せていない1枚ずつの筆記用紙に,好みの模様や紋章を印刷したものが意匠便箋やレターヘッド(手紙の頭部の住所や名前のこと,またそれを刷りこんだ用紙)の起りとみることができる。15世紀初頭から16世紀にかけて,東西貿易の窓口として栄えたベネチアの商人たちが,一種のレターヘッドを使用していた。しかし,以後あまり発展もなく,商用および公用のレターヘッドが普及するのは,石版印刷が発明された18世紀末ころからである。1861-65年のアメリカ南北戦争においては,南軍と北軍との交渉にレターヘッドがさかんに使われた。20世紀に入ると商用レターヘッドは企業の信用,権威を示し,宣伝効果をあげるものとして積極的に利用されるようになり,職種や地位によっても使い分けられるようになった。私用のレターヘッドは,上部に住所のみを印刷するのが習慣であるが,最近は氏名も入れる場合もある。なお,手紙の2枚目からは何も印刷していないか,あるいは社名のみの入った用紙を使う。
日本では,明治時代に毛筆からペン字に移行し,それとともに巻紙から便箋の手紙に変わっていった。最初に便箋が輸入されたのは1905年ころで,明治末期から国内での製造が始まった。大正年間には,抒情便箋と呼ばれる図案入りの製品が女学生を中心に人気を呼び,メーカーは著名画家の原画獲得に苦心したという。昭和初年には便箋の収集がブームになった。最近の出荷額は約68億円(1982)で,実用箋より意匠箋の伸びが大きい。
執筆者:山田 和子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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