葉枯病(読み)はがれびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「葉枯病」の意味・わかりやすい解説

葉枯病
はがれびょう

植物の病気で、葉に多数の斑点(はんてん)を生じ、のちに斑点は拡大し互いに融合して大きな病斑(びょうはん)になり、葉全体が淡褐色から褐色になって枯れ上がる。葉に発生する病気では、多くのものが末期には葉が枯れ上がるため、50種以上の作物で葉枯病が記載されている。病原菌類(カビ)であるが、病原の種類は多岐にわたっていて、セプトリア、セルコスポラ属などの不完全菌類、ピレノフォラ、ミコスフェレラ属などの子嚢(しのう)菌類が病原菌として知られている。これらのうち、発生が多く重要なものはエンバク葉枯病(病原菌Pyrenophora chaetomioides)、ハトムギ葉枯病(Curvularia spp.およびPseudocochliobolus nisikadoi)、コムギ葉枯病(Septoria tritici)、セロリ葉枯病(S. apiicola)、イチゴ葉枯病(Marssonina fragariae)などである。また、針葉樹にも葉枯病が多く発生する。マツ類の葉枯病はPseudocercospora pini-densiflorae寄生によっておこるが、このほかの菌でも葉枯れがおこるので、病原菌の学名の属名を冠してケナンギュウム葉枯病、ディスコシア葉枯病とよび区別している。また、スギのように病原の種類によって葉枯れの色が異なる場合は、灰色葉枯病、灰褐色葉枯病、褐色葉枯病など異なった病名がつけられている。なお、細菌の寄生によっても葉枯れを生ずることがある。この場合は葉枯細菌病(ヒマワリその他に発生)とよばれる。同様に病原が線虫のときは葉枯線虫病(キクそのほか広く花類に発生)という。

[梶原敏宏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

飼料作物病害図鑑 「葉枯病」の解説

葉枯病(アルファルファ)

葉に多く発生する斑点性の糸状菌病。葉では初め内部は灰褐色、周縁は濃い褐色の小斑を形成する。やがて病斑の周縁は淡褐色に変わり、不鮮明な褐色輪紋をもつ3〜5mm程度の円形病斑に拡大する。病斑はしばしば葉縁から伸長して隣接病斑と融合して大型病斑となり、葉は縮んで枯れる。病葉早期に落葉する。病原菌はアカクローバ葉枯病菌と同種だが、アカクローバにはほとんど寄生性を示さない。

葉枯病(オーチャードグラス)

北海道から九州まで広い地域で発生する斑点性の糸状菌病。初め褐色の小さな斑点が現れ、徐々に広がって淡褐色〜赤褐色、紡錘形〜楕円形病斑になり、内部からにぶい黄色またはわら色に色あせていく。病斑は長さ1〜2cmまで広がり、葉枯症状となる。古くなった病斑上には褐色の小粒が現れることがあるが、これは病原菌の柄子殻である。病原菌の寄生性等についてはまだあまり調べられていない。

葉枯病(アカクローバ)

葉に多く発生する斑点性の糸状菌病。葉では水浸状小斑だが、やがて黒褐色になり、葉脈に仕切られた病斑となる。病斑はしばしば葉縁から伸長して隣接病斑と融合して大型病斑となり、葉は縮んで枯れる。病葉は早期に落葉する。病原菌はアルファルファ葉枯病菌と同種だが、アルファルファにはほとんど寄生性を示さない。

葉枯病(エンバク)

九州等で発生が増加している葉枯性の糸状菌病。葉、葉鞘、穎など地上部全体に発生する。葉では初め褐色の小斑点であるが、拡大して長さ5-10mm、幅1-2mmの条斑となる。病斑周囲は激しく黄化し、やがて葉全体が枯死する。病斑表面が黒くかびることがあるが、これは分生胞子である。

葉枯病(チモシー)

春先から発生する葉枯性の糸状菌病。葉の先端付近から淡褐色、長方形から長楕円形、大きさ2ー5×1ー2mm程度の病斑が形成される。病斑周辺は黄化することが多い。多発すると病斑が相互に融合し、葉枯を引き起こす。病原菌はヘルミントスポリウム菌で、チモシーにのみ寄生する。

葉枯病(フェスク)

葉枯を引き起こす糸状菌病。病斑は初め雲形状退緑色で、周囲が黄変するが、次第に褐色から淡褐色または紫褐色の楕円形〜紡錘形の斑点となる。病斑内部はやや退色し、葉に密生する。

出典 畜産草地研究所飼料作物病害図鑑について 情報

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