蘭州(読み)ランシュウ

デジタル大辞泉 「蘭州」の意味・読み・例文・類語

らんしゅう〔ランシウ〕【蘭州】

中国甘粛省の省都。黄河上流の南岸に位置し、古くから西域への交通の要衝。商業のほか化学・毛織物などの工業が盛ん。白蘭瓜はくらんかとよぶウリを特産。人口、行政区209万(2000)。ランチョウ

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精選版 日本国語大辞典 「蘭州」の意味・読み・例文・類語

らん‐しゅう‥シウ【蘭州】

  1. 中国、甘粛省の省都。同省中央部、黄河の南岸に位置し、古来シルクロードあるいは河西回廊の要衝として栄えた。現在は石油化学工業をはじめとする工業都市として発達。ランチョウ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蘭州」の意味・わかりやすい解説

蘭州
らんしゅう / ランチョウ

中国、甘粛(かんしゅく)省中央部にある地級市で、同省の省都。5市轄区、永登(えいとう)、皋蘭(こうらん)、楡中(ゆちゅう)の3県を管轄下に置く(2016年時点)。常住人口369万3100(2015)。漢民族のほかに回族、満洲(まんしゅう)族、トンシャン族チベット族(蔵族)、トゥー族などの少数民族が居住する。

 青蔵(せいぞう)高原が高度を低め、黄土(こうど)高原に移る黄河(こうが)上流部に位置する。関中(かんちゅう)から西域(せいいき)に至るシルク・ロードが黄河を渡る地点にある要衝として、古くから軍事・商業都市として発達していた。現在も隴海(ろうかい)線、包蘭線(パオトウ―蘭州)、蘭新線、蘭青線(蘭州―西寧(せいねい))の各鉄道が通るほか、蘭渝(らんゆ)線(蘭州―重慶(じゅうけい))、成蘭線(成都(せいと)―蘭州)が建設中である。内モンゴル、寧夏(ねいか)、新疆(しんきょう)、青海(せいかい)、チベット各地と中国東部を結ぶ水陸空の交通が集中し、中国西北地区で西安(せいあん)に次ぐ中心都市となっている。市街区は黄河を挟んで東西に長く連なり、その中心は南岸東部にある旧皋蘭県城の城関(じょうかん)区である。市街地の標高は1518メートル、気候は半乾燥区に属する。

 かつては周辺各地の特産品の集積地として、商業都市の性格が強かったが、中華人民共和国成立後、内陸工業基地として、石油、化学、機械、金属、毛織物などをはじめ、各種の重軽工業の計画的集積が行われ、面目を一新する工業都市となった。農業ではとくに白蘭瓜(はくらんか)をはじめとする果物が著名で、広く国内外に移出され、蘭州には「瓜果城(かかじょう)」の別称がある。黄河沿岸は灌漑(かんがい)によって耕地が開かれ、とくに水車による灌漑がみられる。かつては稲が栽培されていたという記録もあるが、現在の主要な穀物は小麦である。名産として、蘭州牛肉麺とユリ根が有名。

 黄河とそれを挟んで迫る両岸丘陵がつくりだす風景は美しく、主要な遊覧地として皋蘭山、五泉山白塔山、雁灘(がんたん)などがある。五泉山山上の泉水は漢の将軍霍去病(かくきょへい)が発見したという伝承をもっており、そのほかシルク・ロードにちなむ史跡が多い。

[秋山元秀・編集部 2017年6月20日]

歴史

漢以後の金城県、後魏(こうぎ)の子城県、隋(ずい)の金城県、唐の五泉県、宋(そう)の蘭泉県、明(みん)の蘭県、清(しん)以後の皋蘭県にあたる。この間、後魏の金城郡、隋以後の蘭州または金城郡、清の蘭州府の首邑(しゅゆう)となり、中華民国では甘粛省都となった。市街は黄河の東にあり、西安(長安)から西域へ向かう要道を押さえており、古来、河西(かせい)地方の要地であった。金城が陥落すれば長安は1日も安泰ではないといわれ、歴代の王朝は軍を常駐させた。漢代に霍去病が匈奴(きょうど)を討ったとき付近の皋蘭山に布陣し、唐代には初め吐蕃(とばん)、のち党項(タングート)(ともにチベット族)の領域に入り、宋代には、宋と西夏の係争地となった。

[星 斌夫 2017年6月20日]

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改訂新版 世界大百科事典 「蘭州」の意味・わかりやすい解説

蘭州 (らんしゅう)
Lán zhōu

中国西北部,甘粛省中西部,黄河河谷平野にある省都。人口209万(2000)。古く黄河上流の重要な渡河地点で,中原地方と〈西域〉を結ぶ河西回廊地帯の交易,交通,軍事上の要地でもあり,唐代には吐蕃(とばん),宋代には西夏などが一時期この地を支配した。漢代以降金城県の地であったが,隋・唐代からは〈蘭州〉,清代には〈蘭州府〉の中心地となったことから今日の名前があり,宋代の城市が現在の市街地の基礎になった。清代,甘粛省の設置に伴って省都となり,1941年には市制が施行されたが,その当時は面積16km2,人口8万6000であった。しかし,解放後は中国西北の中心都市として急速な発展をみせ,面積も市制施行時の数十倍に拡大した。すなわち,まず交通面では,52年今日の隴海(ろうかい)鉄道(蘭州~連雲港)が天水からこの地まで開通し,さらにそれは62年新疆のウルムチ(烏魯木斉)までのびる蘭新鉄道となり,また,1958年内モンゴルの包頭(パオトー)と結ぶ包蘭鉄道,翌年青海省西寧への蘭青鉄道が完成したほか,ウルムチ,西寧,成都,西安,銀川など四方にのびる自動車道路,北京,上海その他の国内主要都市との航空路も開かれるなど,今日も重要な交通中心地である。

 解放前は小規模な工業しかなかったが,解放後は黄河南岸旧市街の西に工業地域が建設され,玉門などの原油を基礎にした石油精製,石油化学,化学肥料,合成ゴムのほか,鉄鋼,機械製造,冶金,綿および毛紡織,製紙,皮革,食品などの総合的工業都市に変貌し,また,原子力施設もあるといわれるが,とくに化学工業は中国有数の規模をもっている。なお,郊外には〈白蘭瓜〉で知られるウリやタバコなどの特産物もみられる。さらにこの地は,中国科学院西北分院,氷河ツンドラ研究所,乾燥地域研究所,大学や各種専門学校がある中国西北の学術中心地でもある。黄河北岸には仏塔がある白塔山と公園,南には泉や寺院のある五泉山と公園などの景勝地があり,回族が多いためにいくつかのイスラム寺院もみられる。
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百科事典マイペディア 「蘭州」の意味・わかりやすい解説

蘭州【らんしゅう】

中国,甘粛省東部にある同省の省都。チベット・蒙古・黄土3高原の交会点にあたり,シルクロードに沿い,古来交通の要地。現在も隴海(ろうかい)(連雲港〜蘭州)・蘭新(蘭州〜ウルムチ)・包蘭(パオトウ〜蘭州)・蘭青(蘭州〜西寧)などの鉄路の交差点で,西北地区自動車道路網の中心。農産豊富で,タバコ,薬材,毛皮を特産。解放後,製油・化学肥料・車両・自動車・工作機械・紡績・アルミニウム製錬などの近代工業を建設。原子力・ミサイル関係の研究機関・工場が設置されているという。蘭州大学はじめ文化・学術機関も多い。清代の1667年陝西省から甘粛省が分離して以後,省都であり,城市は宋代築造(明代修復)のもの。1941年皋蘭県の市街地部分を分割して市とした。207万人(2014)。
→関連項目平涼

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