虎穴に入らずんば虎子を得ず(読み)こけつにいらずんばこじをえず

精選版 日本国語大辞典 の解説

こけつ【虎穴】 に 入(い)らずんば虎子(こじ)を得(え)

  1. ( 「後漢書班超伝」の「官属皆曰、今在危亡之地、死生従司馬、超曰、不虎穴、不虎子」から出た語 ) 虎の住む穴に入らなければ、虎の子どもを奪いとることはできない。転じて、大変な危険を冒さなければ功名成功を得ることはできないの意。
    1. [初出の実例]「不虎穴虎、不危窮憂」(出典花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉三三)
    2. [その他の文献]〔顔氏家訓‐書証〕

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故事成語を知る辞典 の解説

虎穴に入らずんば虎児を得ず

大きな成果を得るためには、身の危険を冒すことも必要だというたとえ。

[使用例] 虎穴に入らずんば虎子を得ずとけっしたる班将軍が壮志、今やこの正直一図の壮年に顕われ[宮崎湖処子*空屋|1889]

[使用例] そりゃ、スパイの当然の任務さ。虎穴に入らずんば、虎児を得ず[三浦朱門セルロイドの塔|1959]

[由来] 「後漢書はんちょう伝」に登場する、武将、班超の名ゼリフ。一世紀、後漢王朝の時代の中国でのこと。西方の異民族の国に使節として派遣された班超は、敵対する別の異民族の使節が、多数の兵士を連れて来ているのと鉢合わせします。身の危険を感じた彼は、夜陰にまぎれて敵を不意打ちすることを決意。そのときに仲間たちに向かって告げたのが、「虎穴に入らずんばを得ず(虎が住むほら穴に入らなければ、その中にいる虎の子を手に入れることはできない)」。そう言ってみんなを発憤させた結果、敵を打ち破ることに成功、班超は西方諸民族を平定した英雄となったのでした。

[解説] ❶虎はその子を非常に大事に守り育てるところから、「虎の子」は、とても価値の高いもののたとえとして使われます。なお、原文では「虎子」ですが、現在の日本語では、「虎児」の形で使うのが一般的です。❷そのまま意訳すれば、「危険を冒さないと、大きな手柄は立てられない」となりますが、班超が伝えたかったのは、「ここで危険を冒して行動すれば、きっと大きな手柄を立てられる」ということだったでしょう。現在でも、思い切った行動を促す場合に使われます。トラに殺されてしまう可能性があるわけですから、危険が大きければ大きいほど、効果的な表現になります。

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ことわざを知る辞典 の解説

虎穴に入らずんば虎子を得ず

虎が住むほら穴に入らなければ、その中にいる虎の子を捕獲することはできない。あえて身の危険を冒さなければ、大きな成果を挙げることはできないというたとえ。

[使用例] そりゃ、スパイの当然の任務さ。虎穴に入らずんば、虎児を得ず[三浦朱門*セルロイドの塔|1959]

[解説] 「虎の子」は、虎がその子を非常に大事に守り育てるところから、大切にして手離さないもの、秘蔵する金品などをいいますが、この「虎子」はめざましい功名や手柄の比喩です。「後漢書―班超伝」にあることば。

〔英語〕Nothing venture, nothing gain.(冒険しなければ何も得られない)

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とっさの日本語便利帳 の解説

虎穴に入らずんば虎子を得ず

危険な虎の穴に入らなければ、虎の子を得ることはできない。中国・西域にいること三〇年の、辺境諸民族と通じた武将のことば。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

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