翻訳|dysprosium
周期表第3族希土類元素に属し、ランタノイド元素の一つ。1886年、フランスのボアボードランによって吸収スペクトルの測定で、ホルミウム化合物から発見され、得にくいという意味のギリシア語dysprositosにちなんで命名された。主要鉱物はユークセン石、フェルグソン石、ガドリン石など。無水塩化物をアルゴン中で液状アルカリ金属で還元すると、銀白色の金属が得られる。空気中に室温で放置すると表面が酸化されるだけであるが、熱すると無色の酸化ジスプロシウム(Ⅲ)になる。
熱水、酸に水素を発して溶ける。普通、酸化数+Ⅲの化合物をつくるが、ごくまれに+Ⅳのものも知られる。
[守永健一・中原勝儼]
Dy.原子番号66の元素.電子配置[Xe]4f 106s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素イットリウム族の一つ.原子量162.500(1).質量数156(0.056(3)%),158(0.095(3)%),160(2.329(18)%),161(18.889(42)%),162(25.475(36)%),163(24.896(42)%),164(28.260(54)%)の7種の安定同位体と,質量数138~173の放射性同位体が知られている.1886年,ホルミウム化合物中に存在することをP.E.L. de Boisbaudranが発見した.元素名はギリシア語で“得がたい”を意味するδυσπροσιτο(dysprositos)から.ガドリン石,フェルグソン石などに含まれる.地殻中の存在度3.7 ppm.希土類元素全体の生産量首位は中国で約98%(2006年)を占める.Dyを含む中重希土類は華南地域でのみ産出する.希土類埋蔵量首位は中国30%,ついでロシア諸国22%,アメリカ15%.融点1412 ℃,沸点2562 ℃.密度8.55 g cm-3(20 ℃).第一イオン化エネルギー5.939 eV.酸化数3.Dy3+ イオンの外殻電子配置は4f 9で塩は強い磁性を示す(磁気能率10.55μB).ほかの希土類元素と同様 DyⅢで化合物をつくる.結晶および水溶液は黄または黄緑色で,ホルミウムの化合物と同様にいちじるしい常磁性を示す.Dyのもっとも重要な用途は,Nd-Fe-B(ネオジム)磁石([別用語参照]希土類磁石)の高温域の保磁力・磁束密度を高めるはたらきをもつ添加剤で,近年価格が急上昇している.[CAS 7429-91-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第Ⅲ族に属する希土類元素の一つ。1886年フランスのボアボードランP.E.L.de Boisbaudran(1838-1912)は,スペクトルの研究からそれまで単一と思われていたホルミウムなる元素が,さらに一つの新元素を含むことを確かめ,ギリシア語のdysprosiōn(〈近づきがたい〉の意)からとって命名した。ユークセン石,フェルグソン石,ガドリン石などの鉱石中に他の希土類元素とともに存在する。塩化物の融解塩電解,あるいはフッ化物と金属カルシウムで還元すると単体が得られる。単体は軟らかく,展性に富んだ灰色の金属。結晶格子は六方最密格子。
執筆者:中原 勝儼
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