可視光線,紫外線以下の短波長の電磁波や,α線等の放射線を受け,そのエネルギーを可視光線に変化させる性質をもつ蛍光体,リン光体を主要顔料とする塗料。蓄光型と発光型とがあり,狭義には後者を夜光塗料(発光塗料)という。一般に,無機または有機蛍光体を展色剤に混ぜてつくる。硫化亜鉛ZnSを母体とし,これに賦活剤として銅を添加し,融剤を混ぜて焼成した緑色の蛍光体が最も多く用いられている。これを使用した塗膜は光の刺激で夜間(暗所)でも十分長時間発光する(蓄光型)。これにラジウムRaやストロンチウム9090Srなど,α線,β線を放射する元素を微量加えると自ら発光する(発光型)。発光型は蓄光型と比べると明るいが黒化しやすい欠点をもつ。有機蛍光体としては,ローダミン,エオシン等の蛍光染料およびローダミンのタングステン酸塩等の蛍光顔料が用いられる。夜光塗料の色光は,添加する賦活剤により,青緑,黄,オレンジ,赤等となるが,2色混合して白色とすることも可能である。展色剤は通常の常温乾燥型を使用する。可視光線下の塗料色と刺激光線下の発光色が一致しないものもある。蛍光体を利用した蛍光塗料は天井や壁面に塗り,紫外線照射を行って,無影照明,広告,ショーウィンドーなどに,リン光体を利用したリン光塗料は交通関係などの標識・標示,時計・計器の文字盤,機械装置の部品などに適用される。
執筆者:大藪 権昭
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発光塗料ともいう。リン光体を良質の揮発性ワニスなどと練り合わせた塗料である。暗所または夜間に自力で特殊の発光(リン光という)をするもので、一般に放射性物質としてラジウムやウランなどが微量入ったアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、バリウムなど)または亜鉛の硫化物がリン光体として用いられる。発光は放射性物質から出るα(アルファ)線によって硫化亜鉛などが刺激を受けておこる。時計の文字盤や計測器の指針、目盛りなどに用いられる。
[垣内 弘]
発光塗料ともいう.暗所で発光する塗料.夜光塗料には,自然発光性と蓄光性の2種類の塗料がある.従来はわずかな放射性元素を含んだ自然発光性の塗料が用いられてきたが,放射性元素を含むため用途の制限があり,生産や廃棄でも厳格な管理が必須であるため,現在では長時間の蓄光性を有するセラミックスを含んだ塗料が使用されている.この蓄光性夜光塗料は,アルカリ土類金属とアルミニウムの複合酸化物に希土類の賦活剤を添加したものを主成分としており,従来の蓄光性を有する塗料より非常に明るい光を長時間発することが可能である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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